音楽レビュー Patti LaBelle


※Patti LaBelleについてはLaBelleも参照

Bel Hommage (2017)


(★★★★☆ 星4つ)




スタジオアルバムとしてはクリスマスアルバム(本レビューページ未掲載)から丸10年、ポピュラーアルバムからは12年を経ての新譜。Pattiの新譜が届いたというだけで大変エキサイティングなのだが、ジャズアルバムと聞いて驚きつつ、正直少し落胆。全般に上質な出来で安心はしたが、やはり圧倒的なシャウトで押しまくるボーカルスタイルを存分に活かすR&Bアルバムを届けてほしかった。しかし、考えてみればR&B/ソウルシンガーがジャズアルバムを出すのは最早珍しくない。Chaka KhanDeborah CoxGladys KnightJaki Grahamなども過去に出しているのだから、Pattiのがないというのもそこから考えるとおかしな話ではあったのだろうが。

ボーカルは衰えを知らず、円熟味を増していて、「こういうジャズシンガーなんですよ」と知らない人に言ったら何の疑いも抱かないだろう。ただ、やはりあの音圧の雄叫びならぬ雌叫びが聴けないのは返すがえす惜しい。しかし、もうPattiも73。とっくに引退していてもおかしくはない歳で、これが出るのは御の字、ありがたいアルバムなのだ、と、自分を言い聞かせつつ聴いた。(2017/5/16 記)

Classic Moments (2005)


(★★★★★ 星5つ)

カバーアルバム。Patti LaBelleくらいの歌唱力だと、カバーソングを集めたアルバムでもカラオケにはならず、きちんと作品として成り立っている。個人的に興味を引いたのはDeniece Williamsの”Silly”や、まさかのハウスディーバKristine Wの曲をカバーした”Land Of The Living”。これを最後に、ゴスペルorクリスマスアルバムの他は、スタジオオリジナルアルバムが長らく出ていない。(これを記しているのは2012年)新作が待たれる。

Timeless Journey (2004)


(★★★★★ 星5つ)

前作から4年を経てのスタジオアルバム。長年親しんだMCAレーベルが売りに出され、Def Jamからのリリースとなった。このアルバムで特徴的なのは、Patti LaBelle自身が曲作りに積極的に参加していること。自身を知り尽くしてのセルフプロデュースとなると成功が難しいということが多々あるが、セールス的にはゴールドアルバムに届かなかったものの、このアルバムのリリースは次作以降のアルバムをリリースすることに繋げられた。

肝心のこのアルバムの内容だが、曲も声も安定している。シングル”New Day”はすがすがしく、サッドソングの”Hear My Cry”も秀逸。

When A Woman Loves (2000)


(★★★★★ 星5つ)

“Burnin'”以降ずっとヒットであり続けたが、唯一ゴールドに届かなかったアルバム。しかし、中身は上質。キッチンで料理をしていると留守電に電話がかかってきて、「きっとキッチンね」と言われて「はいはい今行くわよ」と電話を取る掛け合いで始まるとおり、少しレイドバックした雰囲気で、温かみのある作品群が聴ける。ちなみに全曲Diane Warrenの手になるもの。

曲選びで面白かったのは、Taylor Dayneの”Love Will Lead You Back”を取り上げていたところ。オリジナルの曲調を残しつつも、もちろんPatti色に仕上がっていて、楽しめる。

Live! One Night Only (1998)


(★★★★★ 星5つ)

来日公演を望めないPatti LaBelleのライブを楽しめる2枚組アルバム。曲構成はオリジナルに近く、そしてPattiのボーカルはベストテイクを重ねて編集したであろうスタジオアルバムと何ら遜色ないどころか、迫力で上を行く。即興のフェイク(節回し)もPattiならでは。

このアルバムで唯一残念といえば、Pattiではなくゲストボーカルで参加したMariah Carey。声の調子が最悪で、せっかく盛り上がるはずの”Got To Be Real”は、曲途中でPattiが”Mariah, Mariah, Mariah!”と煽るものの不発に。しかしMariah以外は完璧。

Flame (1997)


(★★★★★ 星5つ)

Gerald LeVertが曲を提供しているのがひとつの聴き所だが、プロデュースは大半Jimmy Jam & Terry Lewis。しかし、Janetをプロデュースした時のような彼ら独自の色は薄れている。ダンスナンバーがありつつも、比較的落ち着いたアルバム。声は健在、どこまでも伸び続けるPattiの歌唱力を堪能できる。

Gems (1994)

(★★★★★ 星5つ)

Patti LaBelleのすごいところは、バラードもさることながら、軽快なダンスナンバーも声が見事にマッチするところ。このアルバムにはそんなダンスナンバーとして、Sounds of Blackness出身のAnn NesbyとJimmy Jam & Terry Lewisの共作”The Right Kinda Lover”が収録されている。”The Right Kinda Lover”はハウスではなないが、これに入っている別曲の”Time Will Tell”ではハウスの可能性も見せている。 大スケールのバラードで〆るのはお約束だが、このアルバムでは様々なサウンドスタイルを見せ、それらがタイトルのように宝石のごとく輝いている。

Burnin’ (1991)


(★★★★★ 星5つ)

まだ「コラボ」流行りでなかった頃に豪華なゲストを招いてのアルバム。Gladys KnightやMichael Boltonの声も聴け、グループのLaBelleメンバーの集った曲もある。が、あくまで主役はPatti。

ダンサブルな曲もあるが聴かせる曲でリスナーを魅了する。面白いのは、ラストの曲”Crazy Love”。当時”Lovers Intuition”というアルバムが少しヒットしたAmy Keys(1枚しかアルバムが出なかったが、シックな声で良かった)の曲のカバー。それをPatti流に歌い上げていて、R&B / ソウルファンには喜ばれた。

Be Yourself (1989)


(★★★★★ 星5つ)

1曲目、映画のテーマ曲にもなったヒット”If You Ask Me To”はスケール感いかにもPatti Labelleらしい。このアルバムで目立つのはPrinceの手になる曲たち。どこからどう聴いてもPrinceの曲なのだが、そのスリリングな曲でPatti Labelleは見事に自在なボーカルを披露して自分の個性を活かしている。Chaka KhanはPrinceの曲でPrinceに乗ってみせていたが、PattiはPattiな感じだ。聴き所はラストの”I Can Fly”。壮大なスケールで大空に誘ってくれる。

Winner In You (1986)


殿堂入り作品

グループとしてのLaBelleではなくソロ歌手Patti LaBelleとして成功を収めたアルバム。その成功はMichael McDonaldとのデュエット”On My Own”が大ヒットしたのに負うところが大きいが、その他の曲もメロディーがきれいな名曲揃い。圧巻なのはラストに収録された”There’s A Winner In You”で、壮大な歌い上げ方にPattiの本領がいかんなく発揮されている。