滴り落ちる時計たちの波紋 (★★★★☆ 星4つ) 久しぶりに平野啓一郎の本を読んだ。語彙力・実験的組み立て・小説好きを満足させるレトリックなど文句のつけようがない。面白いのは、いずれもどこかsyntheticなところ。こ…
カテゴリー: 小説(日本)
日本人作家の小説について印象を記しています。
ただし海外ベースで刊行されたものは、
小説(海外)のコーナーに入れています。
真昼の悪魔 (★★★☆☆ 星3つ) 下記の『沈黙』や『海と毒薬』に比べると、かなり俗っぽい。心の乾き(渇望ではなく『干からびた』無関心)を理由に残酷をやってのける女医と、それを追う入院患者、対峙しようとする神父が病院の闇…
燃えつきた地図 (★★★★☆ 星4つ) ちびちび読んでは間を置きして読んで、読んでいる間、特に後半や、読み終えた直後には星3つだなと思っていた。しかし、この本が与えた印象を振り返ると、星4つと、1つ上がった。 この本が刊…
皆勤の徒 (★★☆☆☆ 星2つ) 好き嫌いが分かれる本だろう。SFマニアにとっては探究心をそそられるだろうが、他の文学を含めて幅広く読書を楽しみたい人にとっては、情緒めいた漢字の修辞や自己耽溺とも思える延々たる幻想描写に…
(★☆☆☆☆ 星1つ) 登場人物にゲイとの設定で人物が出てくるがまったく混乱させた行動を取らせていて意味不明。よくあるBL物と同等の、ゲイをアクセサリーのように扱う女性作家のファンタジーの押しつけでしかない。 文章は印象…
タルト・タタンの夢 (★★★☆☆ 星3つ) フレンチビストロを舞台にして起こる出来事を描くミステリーということで、発行元も創元推理文庫なのだが、特に大仰な事件が起こる訳ではなく、起こるのは解明するにも及ばないちょっとした…
空ばかり見ていた (★★★★☆ 星4つ) 理髪師が世界を旅する物語。ファンタジックなのはこの人の作風のひとつなのだろう。↓に書いた『つむじ風食堂の夜』はファンタジックな中にも現実的側面が大きかったが、これはより幻想に傾い…
箱の中 (★☆☆☆☆ 星1つ) あまりにもくだらなかったのでアマゾンへのリンクは張らない。木原音瀬は所謂BL作家とのこと。『ダ・ヴィンチ』でBL界の芥川賞と評され、話題になった、と、本のカバーにはあるが、こういう類のはや…
ひかりごけ (★★★☆☆ 星3つ) 有名なひかりごけ事件にモチーフをとった表題作の他、『流人島にて』『異形の者』『海肌の匂い』の4篇から成る。少数派の社会、閉鎖空間の中のいわば部分法理を、人間の生理とともに描き出す。 4…
灘の男 (★★★★★ 星5つ) 豪放磊落な荒くれ男とは、この小説の登場人物達のような男達のことを言うのだろう。今の平坦な世の中で、男女同権が進みつつある中、こうした男達の生き方を肯定するとたちまち眉をひそめられることと思…