音楽レビュー Mariah Carey


Me. I Am Mariah… The Elusive Chanteuse (2014)


(★★★★☆ 星4つ)

自己顕示欲の塊のような人でありながら、アルバムの副題がThe Elusive Chanteuse(分かりにくい女性歌手)とはこれ如何に、と思って聴いてみたら、実に分かりやすい内容だったので、「私ってぇ、ちょっと人に理解されにくくてぇ、ミステリアスな部分があるのぉ」という、ありがちな自己評価についてなのかと思った。タイトルに副題があるのは、自分を構成する二面性を表しているということだったが。

ビジネス的に失敗するわけにいかないオリジナルスタジオアルバム、マーケティング的に見て実によくできている。外しどころのない音作りはさすが。EDM風からピアノバラードまでバランスがいい。George Michaelの”One More Try”をほぼ原曲に忠実なアレンジでカバーしているが、これは原曲の方がいい気がする。

それから注目すべきなのは、声が復活したこと。一時期まったく声が出ておらず、高音はすぐファルセットに逃げていた歌い方をしていたが、きちんと歌うようになった。過度なハスキーさも改善されたのには驚き。しかしながらこのアルバム発表後のライブでは惨憺たる有り様だったようで、これは一体何テイクしたのかと思う。

聴いてハッとさせられるような感動や、心洗われる体験はないのだが、嫌われない音作りで歌もまとも。となれば多分また売れるだろう。そしてMariahの自己顕示欲をますます満足させることになるだろう。やはりMariahはMariahだな、と思わせる一枚。(2014/5/24 記)