音楽レビュー Jam & Lewis


Volume One (2021)



(★★★★★ 星5つ)

近年のR&B/ソウルに失望し、新譜もあまり聴かなくなって、過去盤ばかり漁っていたところに、このアルバムのリリースのニュースを聞いて飛びついた。Jam & LewisはThe Timeのメンバーとしてかつてアルバムを出した他、2011年には再結成してThe Original 7ven名義のアルバムを出しているが、まさか2021年になって、Jam & Lewis名義でのアルバムが出るとは思ってもいなかった。

これは想像に過ぎないが、Jam & LewisもR&B/ソウルの近年の無味乾燥ぶり、荒廃閉塞ぶりには閉口し、フラストレーションを溜めていたのではないだろうか。「そうじゃないだろう、音楽ってもっとこんなだろう」という形が本作に結実したのではないかと思うのだ。本作には、本物の歌とは何かを届ける気概を感じる。

各トラックだが、さすが名プロデューサーだなと思うのは、ゲストボーカリストの持ち味、「らしさ」を最大限活かしていること。個性と才能を引き出す楽曲には恐れ入る。まず1曲目にSounds Of Blacknessをフィーチャーしているところからやられる。Ann Nesbyのパワフルな声は、SOBの1991年リリースのアルバム”The Evolution Of Gospel”に収録の”Pressure, Pt. 1″で衝撃を受けたものだが、あの声がそのまま帰ってきた。続くMary J. Blige、Boyz II Men、BabyfaceToni Braxtonと、まごう方なきそれぞれの輝きがある。さすがに私的なわだかまりがあるのか、Karyn Whiteはフィーチャーされなかったが(Karyn WhiteはTerry Lewisと1992年に結婚しているが、1999年に離婚している)、90年代を中心としたR&B/ソウルの中心はJam & Lewisによって創られ、そして俺もその音を聴いて生きてきたのだなあと思わせる。

全体の音構成としては、ケレン味のないエッセンシャルな作り。さすがに2021年ともなればJanet JacksonのControlやRhythm Nationで見せたような派手派手しい音使いはない。が、Jam & Lewisらしさは随所に。Charlie Wilsonをフィーチャーした”Do What I Do”の808ドラムトラックなどは、思わずニヤリとする。そしてラストトラックの”Babylove”のニュージャックスウィング風トラック!

今どきわずか10曲のアルバムだが、珠玉の出来。もう今年のベストアルバムは俺の中でこれに決定した。