映画レビュー 天空の結婚式



(★★★☆☆ 星3つ)
主人公のゲイが結婚予定のパートナーを連れて実家のイタリアの田舎村へ行く、という設定で、ロケ地は有名アニメ天空の城某のモデルにもなったと言われる北イタリアのチヴィタ・ディ・バニョレージョ。映像の美しさは、優柔不断で何事も仕切る気概のない主人公へのイライラをやわらげてくれる。ストーリー的にはさもありなんの感じなのだが、全体にコメディータッチで、ストーリーは飽きさせない。また、いかにもイタリア的にマンマが強い設定、食事のシーンなど、観客がイタリア映画に期待するところも充分にサービスされている。

しかし、食い足りないところも多い。

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まずパートナーはカミングアウト後、実母とコンタクトできておらず確執があるということながら、突然最後の式に母親が参列してきて和解を見る、というのが軽々しすぎる。その間、その母親の葛藤や、理解に至るプロセスはまるで描かれていない、いわばご都合主義。

ご都合主義といえば、主人公が過去に女性と関係を持ち、その女性に追い回されるという設定は大いに疑問。ゲイが気まぐれや過ちで女性とも関係するなどというスイッチャブルな描き方を未だにするとは、非常に誤解を招く。そこは映画の設定としてやってはいけないところ。

そして最後に突如ゲイアンセムのDon’t Leave Me This Wayをみんなで踊って大団円、というのは、思わず笑ってしまうところではあるのだが、それで万事解決としてしまういい加減さを、この映画のコンセプトあるいはイタリア的寛容として受け入れるかどうかは、人により分かれるところだろう。俺は、面白くはあるが、物語の尻を拭けていないな、という印象で、そのいい加減さについてはあまり肯定的に観られなかった。