音楽レビュー Mary J. Blige


My Life II… The Journey Continues (Act 1) (2011)


(★★★★☆ 星4つ)

長いアルバムタイトルがつけられている。今までにやってきたMary J. Bligeのアップデートを試みているようだ。特徴的なのは、トラックの音構成がまず新しいところ。最近はサンプリングサウンドそのままの乾いた打ち込みドラムサウンドがほとんどな中、ディープなリバーブの効いたキックが独特で、他のR&Bアーティストとは違って、このアルバム独特の音がする。

歌は、どこか若返った印象で、声が伸びやかになった。Chaka Khanの名曲”Ain’t Nobody”のカバーでは、Jaki Grahamが同曲をカバーしたバージョンのようなポップささえある。前の自分から一つ抜け出て新展開へ踏み出した印象で、Queen of Hip-Hop Soulの名に恥じぬ出来。

Stronger With Each Tear (2009)


(★★★☆☆ 星3つ)

もはやR&B界大御所のMary J. Blige。デビューアルバムの”What’s the 411?”からのシングル”Real Love”はヘビープレイでよく聴いたが、1994年リリースの”My Life”のアルバムジャケットがあまりにブスで、(無理にラインを引いた口紅が、本人のリップラインから完全に外れている顔のドアップ)気分がすっかり下がってしまって、以降オリジナルアルバムはずっと聴く気にならず、リミックス集の”Dance For Me”だけ聴いていた。それも、Mary J. Bligeが目当てではなく、Thunderpussのハウスリミックスが好きだったからだ。

さて、そんな訳で気を取り直して15年ぶりにオリジナルアルバムを聴いたのだが、前半を聴いたところで「ああ、Mary Jも時流のスタイルに乗っているだけなのか」と危ぶまれた。が、後半はしっかり自分の空間を織りなしていて、もはや時流のスタイルを作ること・それに乗ることが輝きを得ることではない厳しい時代にあって、苦闘して音楽を作っているのではなかろうか、と、その努力に耳を奪われる思いだった。アルバムの存在意義は星4つだが、素直に聴けないアルバムという意味で、星3つ。