音楽レビュー Giorgio Moroder


Déjà Vu (2015)


(★★★★★ 星5つ)




第一弾の先行シングル”Right Here, Right Now”は今年の1月にKylie Minogueをフィーチャーしてリリースされた。そこから5ヶ月で出たこのアルバムは、Giorgio Moroder単独名でのアルバムとしては1988年リリースのサウンドトラック”Mamba”以来何と27年ぶり。その間、GMの音はハウスミュージック全盛時代になっても時折耳にしていて、例えばDonna Summerの”I Feel Love”や”Carry On”などはハウススタイルであってもエレクトリックでGMらしいなあと思ったものだ。

エレクトリックでGMらしい、と想起されるイメージはこのアルバムでも貫かれていて、妙に感傷的な箸休めを挿入しないのがいい。電気が走ったような、という言い回しのように、走っていなければエレクトリックではない。しかしこれを75歳がやっているとは!!

1曲目の”4 U With Love”は8分の裏拍に向けて開放されるフィルタリングが今風すぎて、「そんなに『自分は時代に取り残されてなんざいないぜ』アピールをしなくてもいいのに」と思ったのもつかの間、音が重なると一聴してGMのキャラクターで音場が構成され、納得。そしてもちろんそれは時代遅れなどではなく、しかし一過性の流行りで終わってしまうものでもなく、エレクトリックミュージックにもエバーグリーンはあり得るのではないだろうかと思える。

もちろん、本人としてはパイオニアであっても現役なことに意義がある訳だろうし、せっかく四半世紀を超えて単独名でのアルバムが出た訳だから、セールスのための布石は手抜かりない。Susanne Vegaの”Tom’s Diner”を見事にダンスチューンにしたアイディアも「おいしいネタ使い」だし、そこにBritney Spearsをフィーチャーしているのは確実にセールスを掴むだろう。ファーストカットのシングルはKylieだし、最近はナチュラルな音作りに回帰したKelisも”Back And Forth”でスピニングな輝きを放っている。

Giorgio Moroderはダンスミュージック界のTony Bennettといっても良いのではなかろうか。そうそう、このアルバムには収録されていないが、あの奇跡のデュエットTony Bennett & Lady Gagaの”I Can’t Give You Anything But Love”にもI Can’t Give You Anything But Love (Giorgio Moroder Remix)が存在するのでファンはお聴き逃しなく。

ともかく、このアルバムは必聴!(2015/6/17 記)