音楽レビュー Kelis


Food (2014)


(★★★☆☆ 星3つ)

前作のエレクトリックな傾向は影を潜め、生音で構成された本アルバムは、新レコードレーベルからのリリース。”Food”と題されているとおり、Jerk Ribs, Cobbler, Biscuits N’ Gravyなどと食べ物の名前がついている曲が並ぶ。

肝心の音なのだが、少しブルースやクラシックソウルめいた印象。サウンドは硬質でアコースティックになり、批評家からの評判も概ねいいようが、何かダルで、スピード感を欠く。歌の本質を極めようというのは分かるのだが、こんな懐古趣味でいいのだろうか?という気がする。肩の力を抜いてジャンルから自由でありたい、ということの表れなのかもしれないが、やりたいことの解釈が難しい。(2014/5/14 記)

Flesh Tone (2010)


(★★★★☆ 星4つ)

ジャケットデザインからも読み取れるとおり、攻めている一枚。エレクトリックで、クラブサウンドとR&Bの中間を行く音作りは、ハスキーでシックなKelisの声とマッチして独自の世界を作っている。しかし、ポルタメントやノイズ乱発の安易なEDM (Electronic Dance Music)と違って、カッチリした音が心地よい。

Kelisは決して超絶技巧で人を驚嘆させるようなタイプの歌手ではないが、歌手として人の耳を向けさせる「何か」を持っていて、それが攻めの姿勢と相俟っているのがよい。シングルカットの”Acapella”はよりハウスに明確に振った音作りで、こちらも◎。(2014/5/14 記)