ブックレビュー 木原音瀬


箱の中

木原音瀬『箱の中』
木原音瀬『箱の中』

(★☆☆☆☆ 星1つ)

あまりにもくだらなかったのでアマゾンへのリンクは張らない。木原音瀬は所謂BL作家とのこと。『ダ・ヴィンチ』でBL界の芥川賞と評され、話題になった、と、本のカバーにはあるが、こういう類のはやはりロクなものではない。
閉鎖空間での代償的性行為を、お互いの境遇へのシンパシーと絡めて同性愛に見せかけるストーリー運びの陳腐さ、テーマを重くしかけておきながら視野狭窄に陥った疑似恋愛シーン、いずれも吐き気がする。もうこの際だからあからさまな言葉で書いておくと、優しさや思いやりで相手に好感を持つだけでは男は勃起しない。決して。

BLにはありがちだが、自分のイメージの中で美化される男同士の恋愛のみを認めて実在のゲイについては受け止め切れない未消化ぶりも顕著。紙で読んだがスクラップの束にしか思えない。真剣に性と生を捉えて毎日を生きているすべての人を愚弄している。

ついでに言うと、この名前木原音瀬からしてセンスがない。思わせぶりな筆名をつけてる奴にはロクな奴がいないというのが常々感じていることなのだが、その意を強くした。

印税がこいつに入ると思っただけでムカムカする。作者に送り返してやりたいほどの駄作。そして購入する前に駄作と見抜けなかった自分の恥。(2015/6/16 記)