短編小説『誘蛾灯 Pt3』

短編小説『誘蛾灯 Pt3』

(誘蛾灯 Pt2から続く) さて、とりあえず今夜の飯をどうするか。少し思案して、俺には飯を食わせてくれる所があるじゃないか、と、俺は元バイト先の統合先店舗に電話した。幸い、統合前の元店長が出て、俺のことを覚えていた。ちょ…

短編小説『誘蛾灯 Pt2』

短編小説『誘蛾灯 Pt2』

(誘蛾灯 Pt1から続く) 以前、ガレージに放り出された時は辛かった。ケンゴと付き合う前の男の部屋にいた時のことだ。時々セックスはするが、関係性を敢えて言えば同居人で、付き合っているという意識はお互いなかった。俺はアルバ…

短編小説『誘蛾灯 Pt1』

短編小説『誘蛾灯 Pt1』

夕方、部屋に帰ってきたら、家財道具一式がなかった。まず、玄関に入った途端の殺風景さに、嫌な予感がした。靴箱を開けると、俺の4足の靴だけ。上の棚もきれいさっぱり何もなく、傘立ても、下駄箱の上にあった鍵を提げておくミニチュア…

短編小説『夜中の精霊馬』

短編小説『夜中の精霊馬』

毎夏、8月12日になると俺は夜中にこっそり精霊馬を作る。それをするのはサトルが寝てからのことだ。何もこっそりしなくてもいいのかもしれないが、精霊馬は、前のパートナーの和寿のためで、和寿がそれに乗って俺のもとを訪れてきてほ…

短編小説『朝の紅茶』

短編小説『朝の紅茶』

うちに泊まった男には、朝、紅茶を入れる。別に特別なサービスというわけではなく、俺が朝紅茶を飲みたいと思うからついでにというだけなのことなのだが。「どのお茶がいい?」と聞くと、遠慮なのか、こだわりがないのか、大体「なんでも…

短編小説『ローレットの傷痕』

短編小説『ローレットの傷痕』

「この傷は嫁に怒られるなあ」 ベンチプレスをやっていた上下黒ジャージの男は、起き上がると掌を自分に向けて、薬指にはめたリングの腹に見入っている。 「結構いっちゃってますねえ」 男の補助をしていたトレーナーは、気の毒そうな…