音楽レビュー Taj Jackson


Tragedy And Triumph (2016)


(★★★★☆ 星4つ)




作曲家としてのキャリアは長く、Janet JacksonVanessa WilliamsMonica、Kelly Rowland、Joeと、錚々たるスター達に楽曲を提供している。となると能力としては文句のつけようがないだろうと踏み、ただ、よくあるようにソングライター自身がアルバムをやるとなると精彩を欠いたパターンになりはしないだろうか、と、期待半分、不安半分で聴いてみた。結果、聴いて大正解。

どちらかというとポップで細いタイプの自分の声にマッチするのはどんな楽曲なのかは、多くのアーティストに楽曲を提供してきたキャリアからも熟知しているのだろう、どこかに切なさを漂わせながら爽やかでメロディックな楽曲はその声によくマッチしていて、このところのR&B界で失われていた正統派の美しさを持っている。

ポリシンセの音は幾分クラシックで、ややもすると古臭い印象になりがちなところを、アレンジで上手く乗り切っている。キーボードで作曲をする人ならば、「ああ、こういう音は使いたくなるんだよね」と理解しやすい音だ。アルバムの曲構成上、もう少し起伏があってもいい気がしたが、爽やかなミドルテンポの曲は粒ぞろいで、その心地よさに包まれたまま終わるのも悪くない。ブラックミュージックファンなら聴いておくべきアルバム。(2016/7/3 記)