Always Coko (2012)
(★★★☆☆ 星3つ)
ゴスペルアルバムだが、アーティストの出自からR&Bの分類内に掲載する。
ゴスペルにはかなり思い入れがあるのだろう、Cokoは下記のデビューアルバムよりも後の数枚はずっとゴスペルで押してきた。
普段、ゴスペルは俺は聴かない。キリスト教徒でないのにジーザスジーザスと絶叫されても、自分の心に染み入ることはないし、宗教音楽というのは教義と音楽性を切り離してとらえるべきものではないだろうから、という理由でだ。
しかし、純粋なスタイルのhymnと違ってポピュラー寄りの音楽スタイルをやっているのと、Cokoの軌跡がSWVに戻るかと思いきや、SWV復活のアルバムの後にこのゴスペルソロアルバムを出した意義を知りたくて、聴いてみた。
聴いて複雑な思いがした。1曲目から約7分の大作で、Faith EvansやLil’ Moをフィーチャーして凝りまくって作ってある。確かに歌はすごい。聴かせる。それに、曲自体もディープで、流れた途端にその世界に引きこむ力がある。
しかし、何となく無理に「私はこれ」と自分で世界を決めつけて閉じこもってしまっているような感じがする。Cokoのポップな声とゴスペルスタイルとがフィットしていない気もする。最後の曲はそれこそタイトルからして”This Is Me”なのだが、自分で思う自分と、他人から見て「もっとこうした方がいいのに」という自分とは違うのだなあ、と感じさせた。
そういえば2012年8月にビルボードライブ東京で見たSWV復活のライブで、疲れたような、他メンバーに遠慮するような、どこか一段引っ込んだ感じのしたCoko。”This Is Me”などと言いつつ迷っているのだろうか。(2012/10/9 記)
Hot Coko (1993)
(★★★★☆ 星4つ)
グループにいながら秀でた才能とキャラクターで、「これならソロで行ける」と思われて実際ソロデビューし、成功させた人は結構いる。Chaka KhanはRufusから、Gladys KnightはPipsから、Patti LaBelleはLaBelleから、それぞれ一人になってそれまで以上の成功を収めた。同じように、SWVを聴いてきた人なら、Cokoがソロデビューするのは時間の問題だと思っていただろうし、デビューすれば成功は間違いないだろうと思っていたことだろう。
しかし、ソロになった結果、「何か」が失われた。曲も割といいし、あの張りと伸びのある声はまごうかたなきCokoなのだが、敢えて使い古された言葉でいうと、グルーヴだろうか。しかしそれでも当時聴いた時には、Cokoの声による新しい音楽が聴きたいと思っていたので、概ね満足して比較的よく聴いた覚えがある。それでも何かどこかが違うと思っていた。人というのは不思議なものだ。アーティストとして云々よりも、人によって人は活かされもすればその反対にもなり得るということを感じた。