音楽レビュー Faith Evans


The Notorious B.I.G.とのアルバムについてはこちらを参照

Incomparable (2014)


(★★★★☆ 星4つ)




前作”R&B Divas”はリアリティーショーのサウンドトラックとしてのアルバムだったから、これは久しぶりのオリジナルスタジオアルバムという位置づけだろうか。しかし音的には”R&B Divas”の進化版とでも言えるようなものになっている。

“R&B Divas”でコラボレートしていたKeke Wyattとは相性が良いようで、本作にも”Make Love”というミッドテンポの曲が収録されている。しかし2人は節回しが似ていて、ちゃんとクレジットを見ておかないとFaith Evansの多重録音かと思ってしまう。そういえば、歌に自信のある人にはよくあるやり方だが、Faith Evansも自分でコーラスワークをこなして曲を仕上げている場合が多い。このアルバムでもFaith Evansらしい声の重なりを楽しむことができる。

アルバム全体としては肩の力の抜けたミッド~スローナンバーが目立ち、少しブルーな曲調とも相まっていかにもR&B然とした世界が展開されている。地味といえば地味で、もっとガツンと行ってほしい気もする一方、こけおどしでない玄人好みの音で、R&Bシンガーであるという自覚がより深化したと言えるだろう。ブラックミュージック好きは聴くべきアルバム。(2015/3/23 記)

R&B Divas (2012)


(★★★★☆ 星4つ)

少し変わったアルバムタイトルだしフィーチャーリングアーティストがやけに多いので企画盤かと思ったら、テレビのリアリティーショーを基にしたアルバムなんだとか。そのテレビ番組にも出ているKeke Wiattが複数の曲で参加している。

歌い方は相変わらず。濃い割にはさらっと聴ける。Faith Evans単独の曲は、ライブバージョンの1曲を含め3曲しかないが、常々色々なアーティストとの共演があった彼女ゆえに、デュエットや共作でもうまく調和しつつ独自の色を出している。テレビのリアリティーショーのサウンドトラックだとしても、その主題自体が歌手自身についてのものなので、ぶれずに音楽が成り立っていると感じた。

Something About Faith (2010)


(★★★★☆ 星4つ)

Faith Evansは、昔から気になりつつも横目でちらちら眺める程度の聴き方だった。いろんなアーティストとの共演時に聴いていて、Whitney Houstonをはじめ、個性の強いアーティストとの共演にも自分の色を失わない人だなと思いながらも、声の上品さからか、その色が少し薄いかなと思っていたのだが、あらためてこのアルバムを聴いてみて、かつて薄いと思っていた人は、今ではFaithならではといえるものをはっきりと打ち出せるキャラクターの人なのだな、と、認識を新たにした。

コロンコロンと節回しが巧く、しかも長い独特の歌い方は、今のR&Bではあまり聴かれなくなってしまった歌い方。俺はこういう歌い方が好きだ。そして、フィーチャリングアーティストとしてFaith Evansを聴いてきた俺にとって嬉しいのは、Faithの名を冠したこのアルバムにも多数のアーティストが参加していること。Snoop Dogg, Keyshia Cole, Raekwonなどの名があり、そして最後の曲はKelly PriceとJessica Reedyをフィーチャーしている。