音楽レビュー SWV


Still (2016)


(★★★★★ 星5つ)



前作”I Missed Us”で見事にカムバックを果たしたSWV。カムバックアルバムが出てもそのあとが続かない例もままあるが、ちゃんとこのアルバムが出た。嬉しい限りだ。そしてその内容が秀逸なのだから。

SVWを聴く人は、きっと90年代にニュージャックスイング華やかなりし頃のことも覚えていて、その頃のSWVも聴いていたことだろう。それを受けて、1曲目の”Still”は名曲”I’m So Into You”をモチーフに、しかしフレーズの切り出しでなく歌詞をうまく持ち出して使っている。Cokoのボーカルはパワフルでみずみずしく、TajとLeleeの絶妙のコーラスワークも健在。
この1曲目の期待感を、続く残りの曲も裏切ることなく、SWVらしさと新鮮さを届けてくれて、実に心地よい。

SWVらしさとは表現しにくいのだが、コーラスワークの絡みはもちろんその一つ。そしてミドルテンポのグルーヴ感がボーカルの細かい節回しと組み合わさるところだろうか。それがこのアルバムでは堪能できる。音作りでいうと”Love Song”はだいぶ「今時」の音構成なのだが、そこでもその「らしさ」は存分に活かされている。

歌、グルーヴ、曲、何を取っても一流。何回もリピートして聴きたい良アルバムだ。(2016/2/13 記)

I Missed Us (2012)


(★★★★★ 星5つ)

SWVはよく聴いていた。デビュー当時はニュージャックスイング全盛で、サウンドスタイルにはTeddy Rileyの色が濃かったが、スローもいい曲が多くて気に入っていた。リードボーカルのCokoの声は飛び抜けてよく、彼女がソロになるのは当然の運びだった。けれども、グループでは断然輝いていて「これならソロでも」と思えた人が、独立した途端に「何か」が失われてあまり冴えない結果になったというのはよくある話で、Cokoも、曲も悪くはなかったのに「何か」が伴わず、メジャーな成功はならず、その後はゴスペルなどを歌っていたようだ。

さて、そんな訳で再結成が望まれていたSWVだが、SWVとして集まってのライブパフォーマンスは近年あったものの、アルバムが出たのはこれがやっと。やはり、オリジナルのフォーメーションを得たCokoは輝きが違う。水を得た魚だ。本人としてもアルバムタイトルどおりといったところだったのだろう(”We”ではなく”I”であるのに注意)、やはりハーモニーというのは、大事で、ただコーラスとしてサポートするのではなく、人にエネルギーを与え、バイブレーションを生じさせるものなのだ。

音楽はどれもボーカルを大事にした作りで、それも安心。ラップの必要からラッパーをフィーチャーした1曲を除いて全曲SWVのみ→Brianna Perryという女性アーティストのフィーチャーもあった。全般に、あちこちでもう飽き飽きの「コラボ」という名の売名互助会もなくてホっとする。

聴き物は何と言ってもラストの”If Only You Knew”。Patti LaBelleの曲のカバーなのだが、声が出て出てしょうがないと言わんばかりに熱唱するスタイルのPatti LaBelleに対して、どこまでも伸びやかで艶のあるCokoの歌い方は鳥肌が立つほど美しい。ビルボードライブ東京でのライブでも、ものすごい説得力だった。R&B界にまだこんなボーカルが残っていてよかった。