音楽レビュー Brandy


B7 (2020)



(★★★★☆ 星4つ)
Brandyが2020年の今語られる時、未だに引き合いに出されるのはMonicaとの”The Boy Is Mine”だが、それはもう22年前のこと。俺の記憶もそこで止まっていて、Monicaのねちっこい歌い方が好きでMonicaの音楽キャリアは追っていたが、ボイスレンジも広くなく、歌唱に特筆すべき美点を見出し難かったBrandyの音楽に関しては、記憶はそれ止まり。その後の彼女の人生について、交通事故を起こす等のことについても、殊更興味を持つでもなかった。

なので、「ああいたな、久しぶりにアルバムを出したのか」という感じでこれを聴き始めた。声は多少劣化がうかがわれ、もともと広くはないボイスレンジはさらにキーを落としており、やはりはっとする物を発見することは難しい。そしてサウンド構成はSolangeでも聴いているのかと思うようなもので、コロナ禍にあっての音楽はこうならざるを得ないのだろうなという、ミニマルにも近いもの。

そこまで辛辣に言っておいてなぜこれが星4つなのかと訝られるだろう。まあ、甘々である。相対的に、2010年代後半のR&B/ソウル音楽の不毛具合に比してまだ聴ける、ということだ。そして、このアルバムのラストにはDaniel Caesarの”Case Study 01″に収録されていた”Love Again”が入っているが、それをラストに聴いて、Daniel Caesarの内省的音楽に希求するスタイルであれば、このアルバムも理解し難くはないな、と思い返しての星4つである。今、家で聴く音楽の一つのあり方を示したアルバムとして、このB7は興味深い。(2020/8/10 記)