飲食店レビュー ジョンティ・アッシュ(港区白金台5丁目)

(★★★★★ 星5つ)

店に行った2020/5/20現在、新型コロナウィルス感染症で世は行動自粛が求められている中、飲食店はどこも青息吐息だ。パートナーの誕生日が近く、しかし当日付近はパートナーの仕事のスケジュールが過密で動きが取れそうにない。行きたいと思っていた店がなくなってしまっては困る、と、この際どこか行こうということになった。この手の店は普段から過密になることはないから、今時分は大丈夫であろうと踏んで。

そこで今回選んだのはジョンティ・アッシュ。平野敬祐シェフは、シャトージョエルロブションでの経験もあるという。

店は目黒通りから1本入った所にある。近くには瀟洒な住宅も多く、フレンチレストランを構えるにはいい立地。

今はどこもテイクアウトをやらざるを得ない情勢、本来の雰囲気には似合わないPOPがあったが、致し方ないことだろう。
今はどこもテイクアウトをやらざるを得ない情勢、本来の雰囲気には似合わないPOPがあったが、致し方ないことだろう。

店につき、まずは手指をアルコール消毒。一番奥の席に通され、食事がスタート。インテリアはクラシックの要素を取り入れながらもモダン。木目をグラフィカルに組み合わせた壁、抽象画、ウッドブラインドなどでしつらえられ、ベルベット張りの椅子がシック。

テーブルデコレーションにはこんな遊びが。これだけでなく、生花もあって華やぐ。
テーブルデコレーションにはこんな遊びが。これだけでなく、生花もあって華やぐ。

コースは時世の事情により、昼夜問わず同じコースを食べることができるとのウェブ掲示で、予約時に一番品数の多いコースを頼んでおいた。

サービスはそつがない。マネージャーもきちんと食を学んだ人のようで、安心感がある。凝った料理を出す店になると、フロアーはシェフの意向をどれだけ正確に客に伝えられるかはもとより、フロアーを司る人間がどう店を演出できるかにまで気を配って然るべきだが、それを心得つつ、出すぎず、客がゲストを連れてきた場合にそのもてなしの時間を万全にすることに専心しているようで、好感が持てた。

例によって例のごとく我々はコースを通じてシャンパーニュにするべく、ワインリストを見る。ミレジメを中心に、場所柄プレステージ性を求める客が選択するであろう銘柄の目立つラインナップ。我々はDuval-Leroy Authentis Bouzy Grand Cru 2005を選択。

Duval-Leroy Authentis Bouzy Grand Cru 2005
Duval-Leroy Authentis Bouzy Grand Cru 2005

各料理の印象は下のギャラリーに。総じて言うと、産地や、場合によっては生産者まで吟味した和の食材と、手に入れにくい外国産食材を使って、それらを複雑に、そして時に斬新に組み合わせ、味に驚きと喜びをもたらし、絵画的な盛り付けで目も楽しまるという、多要素の奥行きが感じられた。危ういバランスの上に成り立っているなというチャレンジングな姿勢の感じられた皿もあった。用意された個人用のメニューを食事中に何度となく見返したほど多要素なのは、用いた調理の手法のバリエーションの豊かさも然りで、ともすると煩雑な印象になってしまうぎりぎりのところを、自分の個性としてコースとしてまとめているのも素晴らしい。

途中、食後のお茶かコーヒーではハーブティーの茶葉のサンプルを持ってきて、オーダーするのに香りを試させたくれたり、シェフが挨拶として皿をサーブしてくれたり、帰りにもシェフがハーブティーの土産を手渡してくれるなど、細かなサービスも忘れていない。ぜひともこのコロナ禍を乗り切って、ほしいものだ。サイトには書いておらず、しかしミシュラン一つ星であることを、このレビューを書く時になって調べて知った。サービスや料理の端々に、どこか奥ゆかしさを感じた店だが、そんな奥ゆかしさもある。是非二つ星へと、心置きなく自由に食を追求していってほしい。

※蛇足:パートナーの誕生日等で店を選ぶ時は、いつも気に入ってもらえるかどうかドキドキする。気難しい人ではまったくないが(むしろ逆に気安さが彼の身上)、考える前に本能的・感覚的に味の良し悪しを判別する舌があるし、料理を味わうことについての過去の引き出しも多い。気安くはあるが、店や料理の細かな所にまで気がつく。シャンパーニュも俺と同じ程度に種類を飲んでいて、それについては、好みもはっきりしている。どこかへ食べに行くたび、食を楽しむ共通の喜びがある人がパートナーであることを楽しく思うとともに、店選び・料理選び・シャンパーニュ選びについては、俺のチャレンジでもあるのだ。