音楽レビュー Maysa

Back 2 Love (2015)


(★★★★☆ 星4つ)




何だかんだ皮肉りながらもMaysaをずっと聴き続けているのは、やはり上質で大人の音楽を演り続けている人だからだ。しかしいつもどこか煮え切らなさがつきまとうところ、このアルバムも果たしてそれなのだった。

オープニングナンバーにしてタイトルチューンの”Back 2 Love”のイントロは思わせぶりな展開で、お、いよいよMaysaもゴリゴリのハウスを演るのか?と思わせるコンプの効いたバスドラとサンプルボイス。しかしそこから先の展開はいつものIncognito風4つ打ち(Maysaを語る時、何回Incognitoといえばいいのだろう?)。他にもそういう曲はある。”Miracle”、”Tear It Up Tear It Down”、”Unforgettable”といった曲いずれもが同じ、イントロでエレクトリック風をやっておいて本編でああやっぱりいつものね、と思わせる展開で、曲内でミスマッチ感がどうも気になる。”Back 2 Love”はラストにリミックス版が収録されているが、どこをどうリミックスしたのか分からないほどの代わり映えのなさで、どうにも肩透かし感がある。

そんな中、このアルバムで聴いていて面白いのは、他ボーカリストとのデュエット。フィーチャードアーティストを迎える良し悪しは↓の”Motions Of Love”で少し触れたが、ここでは程よいバリエーションが色を添えている。Mint ConditionのStokleyとの曲”Keep It Movin'”は、人選が意外だったがしっくりくるし、ベテランボーカル職人Phil Perryとのデュエット”Last Chance For Love”は、レコーディング時のミキシングのせいか、PPの声がちょっと奥まって聴こえるのが惜しいが、それでも美しくてほっとする。

ずっとコンスタントにアルバムを出し続けていて、下記のと本作との間にはクリスマスアルバムも出している(未聴)。アシッドジャズ、スムースジャズ界では実力・人気とも文句なしといったところだろう。良い音をこれからも届けてほしい。(2015/6/19 記)

Blue Velvet Soul (2013)


(★★★★☆ 星4つ)




最初の頃はIncognitoで歌っていれば良かったのにと思っていたが、段々とMaysaらしさが確立されてきて、気づけばすっかり大人の音楽の女性ボーカル代表のようになっていて、嬉しいことだ。アシッドジャズの趣はそのままに、Maysaがしっかりリードを取っていて、Maysaらしさを出すにはこれだけの年月が必要だったのだろう。

いつもMaysaを聴くと、アシッドジャズなのか、R&Bなのか、自分の中での分類に迷う。ジャンルなどどうでもよく、音そのものが大事なのは分かっていても、分類に迷うとどこか気持ち的に落ち着かないものだが、このアルバムはまさにそうで、例えば”What Can I Do”のような、エレクトリックピアノのイントロのテンションコードはまさにジャズだが、他のインストゥルメントが入ってきて始まる三連符の曲のスイング感はR&Bのそれ。でも”Put It On Me”のアコースティックで攻めるダンスはアシッドだし、と、迷ってしまう。

これはこれ、MaysaはMaysa、と受け止めて聴くのが良いのだろう。これからどういう路線になっていくのかを含めて注視していきたい。(2015/6/19 記)

Motions Of Love (2011)


(★★★★☆ 星4つ)




前作に続いて翌年に出たこれは、また少しIncognito色が見え隠れ。いいのか悪いのか、それがMaysaにはしっくりくる。古巣との相性が作風的に合っているというのは、ずっと聴いてきた人間にとっては馴染みやすく期待値を半分満たす一方、ソロになっての自由さをもっと発揮してほしいと欲求不満半分といったところ。

しかし、歌はうまいし、シルキーな曲調とも相まって、心地良い音楽を提供してくれる。ゲストボーカリストとの共作を入れず、自分一人で頑張っているのもまた良い。フィーチャー流行りの昨今、せっかくアルバムアーティストをじっくり聴こうと思っていても、セールス的に目論まれたそうした曲が、時に邪魔にさえ思えることがあるからだ。

静かで、夜に似合うこのアルバムは、洗練された音楽が好みなら持っていて損はない。

A Woman In Love (2010)


(★★★☆☆ 星3つ)

Maysaの不思議なのは、美人でもないのに、ものすごく意識して美人風にジャケットを撮るところ。前のアルバム”Metamorphosis”は印象があまり良くなかったが、それはジャケットの印象もあった。

で、今回はこのジャケットで、相変わらずなのだが、ソフトフォーカスでちょっと印象がやわらいだ。音楽もIncognitoの印象から離れ、Maysaとしての音楽になってきた気がする。といっても、ゲストボーカルにWill Downingを迎えるなどして、「それ風」な曲もあるかと思えば、”Metamorphosis”の印象そのままの曲もあり、ジャズがやりたいのか、アシッドジャズなのか、ソウルなのか、微妙なのだが、そこは聴く側もジャンルに拘泥することもあるまい。Maysaは、例えて言うならNancy Wilsonが純粋にジャズではなくポピュラー畑のような感じがするのと同じく、ジャンルに異質な感じをもたせるのが特徴なのかもしれない。

Metamorphosis (2008)


(★★★☆☆ 星3つ)

巧い。声色も、いい「枯れ」が出てきて、耳に心地よい。が。Maysaの音楽はスムーズすぎて、胸に響かず、ひっかからなさすぎのところが物足りない。いつまで経ってもIncognitoとの違いが分からない。

部屋に人を呼んで無言になっては困る時に空間を埋める、またはカフェで演出に音楽は使いたいが表に出てもらっては困るような音楽を探しているなどの場合にはいいと思う。

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