ブックレビュー 折口信夫

死者の書・身毒丸 (—– 評価不能) どうにも自分の読解力のなさを痛感した一冊。面白いかつまらないかということの前に、文章が頭に入ってこない。 まず『死者の書』だが、出版は1943年という戦後の年…

ブックレビュー 小野不由美

黒祠の島 (★★★☆☆ 星3つ) 探偵小説は久しぶりに読んだ。結果は、まあまあといったところだ。グロを売り物にするエンターテインメントが氾濫して刺激に慣れっこになっていると、この本は殺人や因習に支配されているおどろおどろ…

ブックレビュー 小川洋子

完璧な病室 (★★★★☆ 星4つ) 表題の作品を含む短篇集。小説はエンターテインメントのひとつとしてやたらドラマティックな物がもてはやされる昨今だが、自分の知っている世界を持ち札として、細かく細かく世界を描き出してゆくと…

ブックレビュー 小川 糸

食堂かたつむり (★★★★☆ 星4つ) あまりこの人のことを知らずに読んだ。いかにも女性向け、しかも若い人向けの文体で、主人公もそんな年齢設定。難しい言葉は使わず、文章も行変えが多くて、字面が白い。吉本ばななを思わせるが…

ブックレビュー 大江健三郎

洪水はわが魂に及び (★★☆☆☆ 星2つ) 青年期の性の臭いと反抗といった狭い単純な世界が好きな人にはいいかもしれないが、そうでない知性ある人には耐え難い閉鎖社会の描写が延々続き、そこに大江の固執する知的障害者の話が折り…

ブックレビュー 大岡昇平

レイテ戦記(上)(中)(下) (★★★★★ 星5つ) (★★★★★ 星5つ) (★★★★★ 星5つ) 事実が圧倒する重さなだけに、心して読書にあたった。これほど読書するのに決意の要る本もないだろう。戦記と題しているだけに…

ブックレビュー 中島らも

ガダラの豚 【I】【II】【III】 (★★★★★ 星5つ) (★★★★★ 星5つ) (★★★★★ 星5つ) 何ともスリリングで、ちょっとバカバカしくて、恐ろしく、そしてうんちくの詰まった小説。中島らもは生前の飄々とした…

ブックレビュー 中上健次

岬 (★★☆☆☆ 星2つ) 読むのに難儀した。というのは、筋がどれも面白くないのだ。鬱々としていて、主人公が投げやりで、時代の影を自分が一身に背負っているようなスタンス。高度成長時代の歪みやしわ寄せ、イデオロギーの闘争の…

ブックレビュー 長塚 節

土 (★★★★☆ 星4つ) 表紙には「娘が年頃になって帝劇がどうのと言い出したらこれを読ませてやりたい」云々という趣旨の夏目漱石の言葉がある。農民文学の代表者である長塚 節の代表作だけに、中身がつまっていて、もう1世紀ほ…

ブックレビュー 村田喜代子

八つの小鍋 村田喜代子傑作短篇集 (★★★★★ 星5つ) 特段、恣意的にドラマティックな設定や展開を見せるわけではない。設定は日常に徹している。少々幻想的なことを実体験のように語る入院患者などが出てくる話もあったりするが…