ブックレビュー 大江健三郎


洪水はわが魂に及び


(★★☆☆☆ 星2つ)

青年期の性の臭いと反抗といった狭い単純な世界が好きな人にはいいかもしれないが、そうでない知性ある人には耐え難い閉鎖社会の描写が延々続き、そこに大江の固執する知的障害者の話が折り混ざっていく。読むのに体力を使うが、労多くして功少なしの印象。

下巻もいわばVシネマ的展開で、2巻の紙数を費やして書かれた量から得られるものは少ない。ある種偏執的で、書くがために書いた自己目的的な作品。

大江の作品を読むなら、他の作品を読んだ方がよい。