岬
(★★☆☆☆ 星2つ)
読むのに難儀した。というのは、筋がどれも面白くないのだ。鬱々としていて、主人公が投げやりで、時代の影を自分が一身に背負っているようなスタンス。高度成長時代の歪みやしわ寄せ、イデオロギーの闘争の果てに来る虚無的な疲弊。その時代はそんな時代で、それにどっぷり浸っていた人にはそれが世界だったのだ、と、歴史的な背景を酌んで読書に望んでも、その世界の閉塞感がどうしようもなく興味を殺ぐ。
その行き詰まりを書くこと、残すこと、その時の「今」を、文学的な修辞を排した徹底したリアリティーで描写することが、この人のこの作品の価値だと分かっていても、自分の好みとは遠く離れたところにあるなあ、と感じざるを得なかった。どうしようもなく皆が流され、流れに翻弄されながら抗っていた時代を知る、一種の勉強である。読んで損はなかったのだろうが。(2014/9/18 記)