ブックレビュー 近藤史恵

タルト・タタンの夢


(★★★☆☆ 星3つ)

フレンチビストロを舞台にして起こる出来事を描くミステリーということで、発行元も創元推理文庫なのだが、特に大仰な事件が起こる訳ではなく、起こるのは解明するにも及ばないちょっとした痴話喧嘩程度。レストランに居合わせた人を巡る出来事を淡々と綴るような小説であればよかったのだが、そうすると文章が平板で気の利いた表現はほとんどないので、味わいが足りない。何だか漫画チックだなあと思っていたら、コミック化もされているのだとか。

では料理と絡めたあたりはどうかというと、近年のモダンフレンチに馴れている人なら特に瞠目に値するようなものは出てこず、ほうなるほど、と膝を打つような所もない。料理とストーリーが組み合わさった映画でも観た方がよさそうだ。

要するにセンスがイマイチ。文章にしても、美意識にしても。「ミステリーズ!」というシリーズに発表された短編が収録されたものなのだが、いかにも気が利いているでしょう的にお決まりとして出てくる食後のホットワインもうーん、と思う。ホットワインなら寒い日にレストランを訪れた時に最初にデミタスサイズで少し飲んでほっとしてそれからアミューズでも出てきた方がいいものを。
イマイチセンスついでにいうと、ワインボトルを逆さにしてグラスに最後の滴を注いでいるカバーイラストも、ワインを少しでも嗜む人なら「え?」と思うことだろう。どんな人なのかと著者を画像検索してみたが、そこから先は言うまい。

「グルメ番組大好き!」な人(グルメ番組という言い方も含めて)なら読んでもいいかもしれないが、connoisseur向きではない。

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