音楽レビュー Angie Stone

Covered In Soul (2016)


(★★★★☆ 星4つ)




前作から1年してアルバムがリリースされた。これは昨今のアーティスト事情からして、Angie Stoneは極めて順調ということなのだろう。本物志向の人だけに、喜ばしい。

さて、この”Covered In Soul”は名前が示すとおりカバー集。月並みな有名曲ばかりでセールスを稼ぐ類とは趣を異にしていて、かなり渋い曲選。70年代から拾ってきているものもあり、ああこのフレーズ耳にしたことがあるけど誰だっけなと調べては、ああこの人だったと学ぶ。そんな中一聴して自分が分かったのは”In The Air Tonight”。これはソウルの曲ではなく、81年のPhil Collinsのヒット曲。当時これを聴いて、何て哀しくて、それをデジタルドラムのビートで表現できるなんてすごい、そして途中で突然の稲妻のようにカットインするPhilの重々しいドラムもまたすごい、と思ったものだ。尤も、当時はロクに歌詞など聞き入りもせずに、曲調だけでそう思っていたのだが。
Angieバージョンは少しテンポを上げて、よりエレクトリックな打ち込みになっているが、原曲の重々しさを新しい解釈で展開していて、興味深かった。

“In The Air Tonight”のみならず、他の曲も「それをわざわざ今やる意味」を新たに付加していて、単なるカラオケどまりではないのがさすが。ちょっとそぐわないかなという曲もなくはない。が、どれも説得力のある仕上がりになっている。Angie自身の曲も2曲、Soul Sessionと名付けられてセルフカバーしており、そちらも面白い。(2016/8/24 記)

Dream (2015)


(★★★★☆ 星4つ)




相変わらずの「いい線」を突いているAngie Stone。ビルボードのTop R&B/Hip-Hop Albumsではピーク時3位を記録してはいるが、ビジネス的に厳しい業界だからだろうか、前作から3年して出たこのアルバムは、また契約レコード会社が変わっている(ソロ名義のスタジオアルバム7枚のうち、同じレーベルから出ているのは2001年の”Mahogany Soul”と2004年の”Stone Love”だけ)。そしてそうしたビジネス状況を反映しているのか、前作は日本のiTunesストアにはラインナップしていない。

中身だが、クラシックな70年代ソウルを思い起こさせるような音使い、ゆったりしたグルーヴ、それらが相まって、かつてはブラックミュージックの主流であったものが、今となってはAngie Stoneをはじめとする少数の人によって守られている音楽なのだなと、幾分郷愁めいた思いを生じさせる。驚異的なボイスレンジと喉の強さで人を驚かせるだけのものがブラックミュージックではなく、こうした醸成する世界を持てるかどうかが、上質な音楽かどうかを決める。そういう意味で言うと、Angie Stoneはとても貴重な存在だ。

流行りの音とは完全に訣別したように聴こえるこのアルバムを聴いているうち、ポピュラー音楽における価値観の多様化とは、時代にもこだわらず良い物を良いと認めること、そしてそう思ったらそれを演り、あるいは聴くことにあるのだなと思わせる。単にタイムスリップさせるだけの懐古的なものでなく、ここに思想があるなと感じることのできる良作。(2015/11/20 記)

Rich Girl (2012)


(★★★★☆ 星4つ)

いぶし銀の魅力で、いわゆる「黒っぽい」のが好きな人にはたまらないアーティストの一人として、存在は気にかかりつつも、どうも個人的この人に注目する決め手に欠けていた。アルバムはいくつか聴いていたが、気に留めようとしては流れ、気に留めようとしては流れして、Angie Stoneの名前を聞いて特定の曲を思い出すこともできないでいたのだ。実は、このアルバムのレビューを書こうと思って、既にこのサイト内でAngie Stoneにこの1ページを割いていたことさえ覚えていなかったくらいだ。

が、この作品ではいままでの悪く言えばいぶし銀どまりであったところから、どこか抜きでた気がする。このアルバムの冒頭が”Intro: Real Music”と名付けられた音から始まるように、正統派の音楽をやりながら、懐古趣味ではなく、今風の音も適度に取り入れている。

Patti LaBelleのように超絶なボリュームと音程で歌うわけでもなければ、Gladys Knightのように一聴しただけで「ああ、この人」と判別させる特徴的な声であるわけでもないが、じわりじわりと染み入ってくる良き音楽が、ここにはある。

せっかくの長きにわたる音楽キャリアを持ち、レコード会社不景気の時代も乗り切って厳しい今の時代にもこうして新しい音楽を届ける実力があるのだから、ブレイクしてほしいと思う。(2012/10/2 記)

Unexpected (2009)


(★★★★☆ 星4つ)

Angie B.の名前で出ていた頃と比較すると、ソロになりAngie Stoneと名前を改めてからは、渋めのサウンドが特徴だったのだが、本作では少し「今風」なサウンドで若返った。
サウンドは若返ったが、声は円熟味を増している。そして、アルバム前半では目立つ今風サウンドが、後半になるに従ってエレクトリックな響きが抑えめになり、従来からの本格サウンドファンも安心して聴ける内容になっている。

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