音楽レビュー Louie Vega


Louie Vega Starring…XXVIII (2016)


(★★★★★ 星5つ)




恥ずかしながらLouie Vegaのためにレビューページを割くのはこのアルバムが初めてだ。言い訳の一つとしては、彼は長いキャリアを持ち、あまりにもナチュラルに彼の音楽をクラブシーンで聴いて馴染んでいたため。そしてもう一つ付け加えるなら、DJはリミキサーやプレイアーティストとしては名前がよく出るが、アルバムとして曲を束ねて作品をリリースするのは、名の知れた人でも意外に少ないので、アルバム主体の音楽レビューは書きにくいということ。

まあそれはさておき、Louie Vegaを単体でKenny “Dope” Gonzalezと切り離して(つまりMasters At Workとしてではなく)語るというのは、不思議な感じで、一度MAWを思い浮かべて、それから彼独自の存在に向き合わねばならない。いつまで経ってもChris Coxと聞くとああ元Thunderpussの、とか、Guidoの名前を聞いてRazor-N-Guidoの、と脳内翻訳してしまうように。

さて、このアルバムだが、タイトルどおりアーティストをフィーチャーして28曲を届ける。まさにStarringとの言葉にふさわしいそのアーティスト達の名に圧倒される。Caron Wheeler (Soul II Soulのボーカルの、と脳内翻訳)、N’Dea Davenport(The Brand New Heaviesの、と)Tony Momrelle(Incognito)、Adeva (!!!!!!!!)、Jocelyn Brown、Lisa Fischer、Cindy Mizelle、Byron Stingily (Ten City)等々。そうそう、妻のAnané Vegaも。

この豪華なメンバーそれぞれにふさわしいサウンドスタイルを与え、次々に展開されてゆく曲達。ラウンジの軽やかさ、アシッド風のジャジーなコード運び、思わずダンスフロアーとミラーボールを思い浮かべるスウィングがかったハウスビート。それらは皆、ハウスチューンにとってボーカリストのカラーと魅力がいかに重要であるかを知り尽くしたLouie Vegaならでは、ボーカリストによっては10数年ぶりの活躍を見事に主役にして引き立ててみせるのだが、1枚通じてみると、全体は確かにLouie Vega。様々な曲をかけてもそのプレイはDJの色という、クラブの一夜を思わせる見事な作りと展開。

ハウスのヒストリーと、現在進行形の魅力がこの一枚には詰まっている。良質なハウスを知りたければ、これはマストの一枚だ。(2018/7/1 記)