音楽レビュー DJ Jazzy Jeff


M3 (2018)


(★★★★☆)



俺にとってのDJ Jazzy Jeffは、DJ Jazzy Jeff & The Fresh Prince名義で1993年にリリースした”Boom! Shake The Room”で止まっていた。もちろんDJ Jazzy Jeffはその後も活躍を続けていて、DJらしくミックスアルバムも発表していたが、オリジナルでのスタジオアルバムが今回リリースされて、懐かしさと共に聴いてみた。

全体の印象はクール&ディープ。テンションコードを用いた白玉のコードバッキングが流れるなかラップするスタイルは、さながらディープハウスならぬディープヒップホップとでも言ったらいいだろうか。今年53歳のDJ Jazzy Jeffは、成熟した大人が演るヒップホップとはどうあるべきかの提言を行っているように見受けられる。

彼のたどってきた長い軌跡は、早くに自分の時代を創り上げ、今もまた自分のスタイルを主張し続ける点で、どこかSoul II SoulのJazzie Bを思わせる。共に名前が日本語で書くと「ジャジー」だからというのもあるが、クリエイティビティーに溢れた80年代からクラブカルチャー全盛のエネルギーに満ちた90年代前半を経て、その後の閉塞感や商業主義を潜り抜け、今打ち立てるべきスタイルを、深い洞察のうえで掴み取った感があるのだ。
思索の深さを感じられる大人のヒップホップ。ヒップホップといえば卑語連発、ビデオではフェラーリかランボルギーニを出して女にケツを振らせ、アルマンドブリニャックのボトルネックをふん掴むだけのイメージの人もあろうが、このアルバムは、そんなヒップホップにアレルギーのある人も聴けるものだ。(2018/6/21 記)