(★★★★★ 星5つ)
※来訪時は中央区銀座5丁目にあった。現在は銀座1丁目に移転。
Dominique Bouchet Tokyo(ドミニク・ブシェ・トーキョー)はフレンチレストラン。名レストランの総料理長を務めたドミニク・ブシェが東京にレストランを構えて早々にミシュラン2つ星を獲得した店。銀座4丁目交差点のすぐそばといういいロケーションに、しかしひっそりと抑制的なデザインの入口が地下に向かってある。
地下1階はウェイティングバー兼シャンパンバー。DB自らの名前を冠したハウスシャンパンのナビュコドノゾールの瓶がどんとしつらえられた一枚板のカウンターが印象的。レストランはそこから更に地下に下がったフロアーにある。シンプルなデザインながらどこか温かみと落ち着きを感じさせる空間。
テーブルとテーブルの感覚はやや近接気味。他に会話が聞こえると困るような人は、丸いパーティースペースのようなラウンドテーブルでカーテンで区切られる席を予約するのがいいだろう。パートナーの誕生日を祝うために訪れたが、我々は至って普通のカップルなので、普通の席で充分。
サービスは温かく、心がこもっていて親切。ギャルソンやソムリエとの会話も楽しいし、適度な距離感と絶妙のタイミングでのサーブは、新しい店なのにこなれている。店の好みやソムリエのプライドを押しつけるよりも、まず客に寛いで料理を楽しんでもらおうという姿勢が感じられる。
夜のメニューは3種類。料理を選ぶコースが2つと、おまかせコース。我々はおまかせコースにしたが、その時に入った素材のサジェスチョンがあって、メインコースを差し替えてもらい、さらにデザートもパートナーの分のみ差し替えてもらった。そうした相談に対する臨機応変ぶりも素晴らしい。各料理の詳細は下の写真にて。総じて言うと、造形も素晴らしいが奇をてらった感じではなく、基本のソースがしっかり伝統を踏まえながらもどこか新しい風を感じる構成で、バランスが良かった。
レストランに入った時に、バーにちょうどシェフご本人がいらっしゃって挨拶し、更に帰りには奥様(日本人の美しい方だった)もいらっしゃって、呼んでもらったタクシーを待つ間、しばし歓談した。お二人とも感じのいい方。そしてシャンパンが大好きというのもいい。ここは味や趣向に通じている人で、シャンパン好き、かつリラックスした新しい高級感を感じたい人にお勧めの店。(2014/6/3 記)
入口はひっそりと奥ゆかしい。このロゴのついた階段を左に降りてゆく。
アミューズはサブレとグリュイエールチーズのグジェール。最初の1杯のシャンパーニュによく合う。
1杯目はここのハウスシャンパンを選択。Pierre Mignon(ピエール・ミニョン)にオーダーしているものだとか。ピノ・ムニエ8割、シャルドネ2割のセニエのロゼ。
「キャビアとウニをのせたオマール海老のジュレ セロリとウイキョウを添えて」オマールにはディルが少し添えられている。影に隠れているので、食べてはっと気がつく。セロリとウィキョウ(フェンネル)は似ているが、食感はセロリに、ふっと香る甘さはフェンネルに分担されている。ジュレはオマールの殻の風味が濃厚。
コースを通じてのシャンパンはLaurent-Perrier Grand Siècleを。
「赤ワインでポシェした鴨のフォアグラ スパイスの香り リンゴのマーマレードとドライフルーツ」。これは通常取り除くフォアグラの血管を敢えて残し、ポシェされたもの。フォアグラが濃厚な風味を残しながらバターのようになめらかになる。斜めに走る粒はパンデピス。
「キャベツで包んだオマール海老 ブイヤベース風ソース サフランの香りのちいさなジャガイモ」。どこか素朴さを感じる料理。一皿目でもっとオマールを食べたいなと思ったら、ここに出てきた。オマールは小さめにカットされているが、弾力あるオマールならではの食感と風味はそのまま。ソースはブイヤベース風で、先のコンソメジュレとは異なった味わい。
「ヒラメのロティ アーティチョークと紫ジャガイモのチップス ウイキョウのエミュルション」。これもどこか素朴さを感じるのは、ヒラメやアーティチョークが親しみやすい食材だからか。ここにもウイキョウが入っているが、忍ばせ方が違う。一皿食べて「あの食材は別のやり方だとどうなるんだろうな?」と浮かぶ疑問を次に引き継いで新しく見せてくれるのが、一つのやり方なのかもしれない。
せっかくのグランド・キュヴェなので、グラスを変えて広口の白ワイン用でも試させてくれた。
本来のメニューでは肉料理は牛テールの赤ワイン煮込みだったのだが、いいフィレが入ったというのでそちらにしてもらった。「牛のフィレ トリュフソース 野菜のファランドール」。ファランドール (Farandole) とは、フランス南部のプロヴァンス地方で手をつないで踊られる舞曲のことだとか。フィレは抜群のコンディション。囲む色とりどりの野菜も、それぞれ本来の味がはっきりしていておいしい。
俺の方のデザートは「ショコラと柑橘のスフェール 柚子のソルベ」。濃厚なビターショコラのムースがメレンゲに乗っている。柑橘はデコポン。柚子のソルベはキュッと酸味の効いた、柚子本来を楽しめる味。
パートナーのデザートは「木苺のスフレ」。スフレなのでもちろんこのタイミングに合わせて焼き上げられたもの。パートナーはいたく気に入っていたようだ。フィナンシェはバターの風味豊かでしっとり。
「パリジャンの小菓子」。最後のお茶菓子にも手抜かりなし。薔薇と木苺とライチのギモーヴは香りがよく、キウィのジュレは風味濃厚。