付き合い遍歴 その13 相互侵略


そんなことがありつつも、俺は健二郎との関係を続けていたが、もうこうなると、続けるのは意地だった。最早健二郎のことが好きだの云々ではなく、続けると決めたからには続けるのだというミッションだった。健二郎が大学を卒業して資格を取り、就職してもその時に遠距離が解消される見込みもなかった。関係をただ続けることだけが自己目的化していた。

そんな中、夏休みの時期が近づいてきた。どう過ごそうかと健二郎に持ちかけると、健二郎は涼しい顔で「ハワイに行く」と言う。一人で。もう航空券もホテルも押さえたと。そんな話は事前に聞かされていなかった。社会人である俺は短い夏休みしか取れず、「普段遠距離なら休みは普通は付き合っている相手と過ごそうと考えるんじゃないか?」と俺は思ったが、健二郎の口調からして俺の「普通」は健二郎には通じないようで、俺はその言葉を飲み込んだ。言ったところで行動を変えられはしないからだ。

そのハワイ行きについて、旅行への単純な期待以上のものを孕ませている節が、健二郎の話の端々に感じられた。何かおかしい。ハワイといえば過去の二股案件が思い浮かぶ。嫌な共通項だ。

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