付き合い遍歴 その13 相互侵略


破綻は目に見えていた。破綻のきっかけになったいざこざの詳細は覚えてないが、諍いが起きた。ハワイの件もあり、これはもうダメだというお互いの認識があったにもかかわらず、そのリカバリーのため、俺は健二郎には告げず、ある夜、夜行バスに乗った。そんな当時の俺をドラマクイーンと皮肉ってもらってかまわない。俺にとってはミッションなのだからdesparateになって当然だった。とかくこの関係ではソープオペラで起こるようなことの連続だったのだ。

朝早く、バスは健二郎の住む町に着き、俺は景勝地の散策などして時間を潰した後、健二郎に渡そうと花束を地元の花屋で調達し、健二郎の大学に向かった。学祭があって、そのステージに立つことをmixiの日記で読んでいたからだ。

ステージを鑑賞し、降りてきた健二郎に声をかけた。「なんでおるん?」と言いつつ、花束を受け取った健二郎だったが、俺が来るのではないかとは半ば予感していたのだろう。mixiの日記にその予定は書かれていて、そこは俺が見ることを知悉していたのだから。健二郎とはそういう男だった。俺もそう読まれていると踏んで、日程に合わせて行った訳だ。

「でもやっぱり続けてはいけない」という健二郎からの返事が来たのは、直後だったか、それとも俺が東京に戻ってきてからだったか。いずれにしろ、侵蝕し合ってきた関係が終わる時、正直、俺はほっとしたのだった。そして、もう付き合いはしばらくはいいや、という心持ちになった。それは、侵蝕されるのはもうここで止めにしたいという気持ちと、「やられてばかりではなるものか」と、健二郎に対して復讐心を燃やし、裏で策を巡らして実行する自分自身に疲れたからでもある。それは、次に記す。

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