付き合い遍歴 その10 二人を死が分かつまで


ここで記す護とのことは、他の関係とは同列に語れない気もする。何故なら、生涯一緒に過ごしていこうとお互いに初めて思えた存在で、自分の中で重みが違うからだ。が、これも経てきた自分史ゆえ、シリーズエピソードの一つしてここに書く。

いつも誰かしら付き合う人がいればと思い、実際(どれも大してうまく行かなかったにせよ)誰かいることの方が多かったが、素性をなかなか明かさない相手との一件と、二股をかけられていた一件があって以来、人とはしばらく付き合わなくてもいいなと、考えを変えていた。社会人としてはまともに働き、順調に仕事をする一方、私生活ではクラブにバーにハッテン場にと遊び回っていて、ある春の日、当時北新宿にあった有料ハッテン場に行った時、そこで護と会った。

護はクリクリ坊主で、目がきれいだった。セックスの相性がとても合った。連絡先を交換し、お互いの部屋を行き来した。護は、同じくゲイのルームメイトと、社宅だという部屋でルームシェアをしていたが、隣室に声が漏れるのも構わず、そこでもセックスをした。

数回会って、アクセサリーの話になった時だ。冗談ごかしに俺が「お揃いのしようか?」と持ちかけると、「いいよ」との返事。シルバーの金具のついたレザーブレスレットをペアでした。それが付き合い始めを確証した出来事だ。後に、揃いのシルバーリングもし、カスタムで作ったレインボーカラーの携帯ストラップをお互いの携帯に付けた。それらは、俺にとって初めてのペアアイテムだった。もうしばらくは人と付き合わなくてもいいかと思っていた無欲の、思わぬ果実だ。

当時俺は友人達とルームシェアしていたマンションの一室に住んでいた。定期借家物件で、入居時には更新可とあったのに、更新の時期が来た時、契約は更新しないとの家主からの通達があった。同じタイミングで、護は住んでいた社宅を出ることになり、じゃあ一緒に住むかと、社宅を出て転居費用が丸々会社から出る護が笹塚にロフト付きの新築アパートを見つけて契約し、二人で移り住んだ。

同居生活は楽しかった。二人揃ってローテーブルに食事を並べ食べる夕食の時間、入眠する時「これをつけてると寝れる」と習慣的に護がつけっぱなしにしていた『やっぱり猫が好き』のビデオを護が寝るのを確かめてから俺が止めて寝る夜、一緒に入る風呂、買い物、たまの近所での外食、何もかもが夢のようだった。そして気づけば俺のセックス依存症は鳴りを潜め、入り浸っていたアンダーウェアバーにも行かなくなった。

その一方で、この関係はオープンリレーションシップというやつだった。お互いカジュアルなセックスなら他でしても構わないスタンスだった。一度、護が俺の知己を家に連れてきた時は流石に一線を超えていると怒ったことがあったが、その事件もすぐ乗り越え、それ以外に特に問題は生じなかった。俺は俺で、カジュアルなセックスを他人とする機会もあったが、回数は依存症の頃に比べれば遥かに少なかった。

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