シャンパーニュレビュー Lanson Clos Lanson 2009



2024年の年明けフルボトルはまずこの1本から。プレステージキュヴェNoble CuvéeプレステージキュヴェNoble Cuvéeはロゼ含め何本か飲んだが、このレアキュヴェは初めて。

Lanson Clos Lanson 2009
Lanson Clos Lanson 2009

Lanson Clos Lanson 2009(ランソン クロ・ランソン2009)は僅か1ヘクタールのランソン家自ら「秘密の庭」と称する壁で囲われた単一畑から穫れたぶどうのみを使用して作られる「クロ」シャンパーニュ。昔はクロといえばフィリポナのクロ・デ・ゴワス(以前はクロ・デ・ゴワセと言った)、クリュッグのクロ・デュ・メニルとクロ・ダンボネ位だったが、最近はミレジメ同様ピュアリティーや個性が評価されるようになって、クロは他のメゾンでもぼちぼち増えてきた。

さて、Clos Lansonはその単一畑から穫れたシャルドネ100%で作られる、つまりブラン・ド・ブランのシャンパーニュ。ドサージュは僅か3g/ℓ、エクストラ・ブリュット。アルゴンヌの森からのオーク樽で醸される。熟成は12年、さらに澱抜き後半年以上熟成させて世に出される。2009の本数は僅か7545本。ランソンはとあるワイン商社の記事によるとスタンダードの Black Labelで年間500万本を生産するというから、如何に稀少なシャンパーニュであるかが分かる。ちなみに飲んだボトルにはシリアルが記されており、№3255だった。

木箱には畑とランソン家の教会が描かれたエッチングのメタルプレートがあしらわれている
木箱には畑とランソン家の教会が描かれたエッチングのメタルプレートがあしらわれている
ラベルにも同様の意匠が。
ラベルにも同様の意匠が。
ミュズレはもちろんClos Lanson専用
ミュズレはもちろんClos Lanson専用

さて、開栓して一口目に感じたのは端正さ。基底には力強いものがあるが、2009なのにフレッシュだなという印象。ランソンではマロラクティック発酵を行わないらしく、そのフレッシュさはレストランで飲んだNoble Cuvéeでも感じた。

香りは花や果物、発酵香にスパイスと多岐に渡っていて、フレッシュさと複雑さによる奥深さはさすがトップキュヴェ。ミネラル感も感じられる。樽発酵によるマール様の香りあるが、決して出すぎではなく、シャンパーニュに求めたい華やかさを邪魔することもなく、一部他のメーカーのブラン・ド・ブランで感じることのある出すぎた力強さではない。

液体はあくまでスムーズ。ブラン・ド・ブランらしいペールゴールドの色に、きめ細かな泡が心地よい。

2009だが、色味にもフレッシュさがある。
2009だが、色味にもフレッシュさがある。

香りや味は時間と共に変化していき、端正さを保ったまま深みが増す。現れる香りのバリエーションがとても興味深く、それを探るうちにこの稀少なキュヴェがどんどんなくなっていってしまう。

Clos Lansonはシャンパーニュにステータス性を第一に求める人には理解されにくいかもしれない。下世話な話だが、スタンダードミレジメのドンペリニヨン、ペリエジュエ ベル・エポック、ヴーヴクリコ ラ・グランダムといった華々しいシャンパーニュよりもこれが何故高価なのかと。

しかし、こだわり抜いた作りと、その結果もたらされたこの味わいは、上質を知る人には納得をもって受け入れられることだろう。全般にシャンパーニュの値段が上がってきている昨今では、トップキュヴェ同士で比較すると相対的にはむしろリーズナブルなのではとさえ思える。無論、絶対的にはおいそれと手の伸びる価格ではないにしても。

個人的にまた是非積極的に買うかと問われると、他のメゾンの魅力的なトップキュヴェを選択してしまうかもしれないが、秘密の庭に立ち入るこの機会を得てよかったと思うし、誰かに「印象の良かったトップキュヴェは?」と聞かれたら、必ずやClos Lansonの名前を挙げるだろう。