飲食店レビュー Restaurant L’aube (フランス料理 港区六本木1丁目)


(★★★★★ 星5つ)

Restaurant L’aubeはモダンフレンチの店。誕生日リベンジの食事をしに、パートナーとランチに赴いた。1週間ほど前に他店で残念な体験をし、それを払拭したいとこちらを訪れた。結果、リベンジ大成功。ここでは大変満足度の高い体験ができた。

場所は六本木1丁目にあるアークヒルズ仙石山森タワーの1階。鳴り物入りで今月末にオープンした麻布台ヒルズからほど近い場所。周囲は高級マンションが立ち並ぶ。L’aubeは静かな環境にあって、濃い青に塗られた壁の落ち着いた外観を持つ。2023年6月に移転したのだとか。

中に入ると、モダンでリラックスした雰囲気。すっきりはしているが曲線や多面体を活かした壁装飾など、個性がある。あまり禁欲的でミニマルなスタイルよりも、こうした方が個人的に好み。既に何席かのテーブルには他の客がいて、平日昼でも賑わいを見せている。
キッチンはオープンスタイルで、すぐそこで調理に勤しむシェフやスタッフの姿が見える。ライブ感はとても興味深い。そして皆が粛々とスムーズに事を運んでいるのが看てとれる。

メニューはディナーと同じMenu HARMONIEを選択。着席後の挨拶とドリンクのオファーもスムーズ、シャンパーニュの選択もコースとの相性を相談のうえ決められる(高級店でも案外客が決め打ちで選択した物をそのまま受ける店もある)。今回はLanson Noble Cuvée 2002とLaurant Perrier Grand Siécleとで迷い、相談のうえで前者を選択。結果、繊細な味わいでともすると相性が裏目に出かねない魚類ともよく合った。

サーブスタッフは複数いるが、どの人も料理のことをよく理解して説明によどみがない。また、我々のふとした発言にも情報を与えてもらい(器の情報、料理の技法、材料の産地の話等)、大変示唆に富む。こうした食文化を深める姿勢は、大変ありがたい。

料理だが、美味なのは当然として、食材の組み合わせの新鮮さ、プレゼンテーションの見事さなどが光る。メニューの記述に主材料だけが書いてあるのはもはや定番だが、そこにはフォーカスしてもらいたいのが何なのか、そしてそこにある「おや?」と期待と探索する気持ちを起こさせるのに効果的。

ここは専属パティシエがいる。デザートではパティシエの世界の展開ということで、テーブルランナーを新たにテーブルに渡して演出するあたり、心憎い。そしてそうした別展開にふさわしい、素晴らしいデザートが供される。これだけを食べに来てもいいというほどの出来。スイーツはメニューの物とは別品だが、取り寄せもできるようなので、今度取り寄せてみたい。

全般を通じて、大変充実感があった。2、3、料理本体ではなく少し気になることはあったが、それはほんの少しで、全体の印象や料理の出来を傷つけるものではない。それぞれの料理はもちろん素晴らしいのだが、コースという組み立てでもって調和を形作っているのは、コース名どおりまさにハーモニー。機会あれば是非再訪してみたい店。

(2023年12/1 記)

2023年12月6日追記:

訪問の感想としてインスタに「ミシュラン 2022一つ星。きっとミシュランは返り咲くことだろう。」って書いておいたインスタに「ミシュラン 2022一つ星。きっとミシュランは返り咲くことだろう。」と書いておいたら、その予言通り2024は一つ星奪還!