大晦日にはいつもいい1本を飲むのが我が家の通例。2023年の大晦日には、憧れの1本を飲む機会に恵まれた。いつか飲んでみたいと思っていたBollinger R.D.だ。Bollingerはどのキュヴェも素晴らしく、好きなメゾンの十指に入る。Grande Annéeも各ヴィンテージ気に入りで飲んできたが、レアキュヴェのR.D.はなかなか手が出なかった。
Bollinger R.D. 2007(ボランジェ エール・デー2007)はBollingerのプレステージキュヴェ。名前はRécemment Dégorgé(最近澱抜きされた)の頭文字。アールディーと呼ばれるがやはりここはフランス語の綴りから来ているのでエール・デーと呼びたい。セパージュはピノノワール7割、シャルドネ3割。14区画のグラン・クリュとプルミエ・クリュ、そのうち9割強はグラン・クリュの畑からのぶどうが使用されているとか。長期熟成され、デゴルジュマンは手作業。ドサージュはわずか3g/l。
ちなみに、イギリス王室御用達のマークは、まだエリザベス2世のものだった。
ボランジェのウェブサイトを見るとR.D. 2007の特徴はBold & Vibrantとある。色は明らかなゴールド。香りははちみつやブリオッシュ、そして温かみのあるスパイス香とあって、それらは確かに感じられる。時間とともに開いてくると華やかさも深みも増す。液体はあくまで丸みを帯びていて、複雑性とフィネスの同居はさすがのプレステージキュヴェ。
確かに引き出されてくる香りのパレットの幅広さは驚くほどなのだが、この飲んだボトルの個体としての特徴なのか、boldというよりは、奥ゆかしさを感じた。デゴルジュマンから2年半が経過しており、泡がやさしめだったからかもしれない。Bollingerといえば007だが、Grande Annéeのような、いかにも男性的でジェームスボンド的押し出しというよりは、円熟のイギリス紳士のようだ。
そして紳士はエスコートが上手。用意したコンソメジュレで巻いたパテ、エクストラエイジドコンテ、セミドライアプリコット、トリュフゴーダ、蟹の甲羅グラタンなどともしっかり寄り添ってくれた。
飲んでなくなってしまうのが惜しいと感じられるが、液体がスムーズで減って行ってしまう。今度この紳士に出逢えるのはいつだろうかと思いつつ、上質な時間を過ごせた。