過日、俺の誕生日で開けた1本。

Philipponnat Clos des Goisses Brut “L.V.”(Long Vieillissement) 2000(フィリポナ クロ・デ・ゴワセ ブリュットLV ロング・ヴィエイユスマン 2000)は、フィリポナのトップキュヴェ クロ・デ・ゴワセを、澱と共に長期熟成したもの。クロ(clos 単一畑)を名乗れるシャンパーニュのキュヴェは極少数で、フィリポナのクロ・デ・ゴワセはそれだけでも希少。それを長期熟成したものが、このLong Vieillissementバージョン。公式サイトには載っていない。
ボトル裏面には近年のシャンパーニュによく見られるデゴルジュマン(澱抜き)の年月とドサージュ(澱抜き後のリキュールによる補糖)が記されている。このボトルのデゴルジュマンは2015年5月。2000年秋の収穫仕込みからデゴルジュマンまで、実に15年半を経ていることになる。通常、クロ・デ・ゴワセは10年熟成。
ドサージュは4.5g/Lと、少ない。セパージュ(使用されるぶどう品種の割合)はデータがないが、クロ・デ・ゴワセは例年ピノ・ノワールが3分の2、シャルドネが3分の1で、それにならうものだろう。
開栓してグラスに注ぐと、16年を経た液体はディープゴールドの輝き。

香りは奥ゆかしい。フルーツコンフィ、蜂蜜、ヘーゼルナッツなど。液体の色の濃さとは裏腹に、必要以上のコクは感じさせない。全てが完璧に丸められていて、きめ細かい液体は舌に何の名残も残さず消えてゆく。が、余韻は長い。泡はきめ細かく、長年経っているにもかかわらずいつまでも立ち続ける。

プレステージ/トップキュヴェのシャンパーニュというと、まず思い浮かべるのは華々しい感じだが、クロ・デ・ゴワセL.V.のこうした慎み深いといってもいい奥深さは、人によっては「決して安くはない物がこれ?」と思うかもしれない。万人には理解されないだろうが、磨き込まれた球体のようなこのあり方は、一般に思われているシャンパーニュのイメージとは別の、トップでしか実現し得ない一つの究極。人の手と時間とが費やされた結果が、こうした趣味の良い物に結実していると、実に嬉しい。こういうのは通にこそ飲んで楽しんで欲しい。
