音楽レビュー Ariana Grande

Sweetener (2018)


(★★★★☆ 星4つ)




キュートで憧れのアイドルとしてデビューし、5年も経つと今度は才能が本物であることの証明やリーダーシップを求められる。かつ巨大な利益を生み出す商品として存在し続けなければいけない。Ariana Grandeの置かれている立場はとても困難だ。

そんな転換点でのアルバムだが、転換せざるを得ない転機としての、あのテロ事件(2017年5月22日にマンチェスターアリーナで開催していたコンサート終演直後に起こった自爆テロで多数の死傷者が出た事件)は、活動に影響を与えなかったはずがない。当然、それをどう乗り越えて次の一手を指すかは、Arianaにとって失敗のできない重大事な訳だが、それをこのアルバムでは上手くやってのけた。と書くと意地悪な言い方に聞こえるだろうが、皮肉を言うつもりはない。本当に最適解なのだ。

甘美な世界を描くことで平和を希求したと謳うこのアルバム。ここでMadonnaのようなゴリゴリの主張の怖い存在になるのも正解とは思えないし、何だか政治的発言がイヤな感じなのを逆手に取ってのTaylor Swiftのようなイメージチェンジも成功するとは思えない。ここは従来の路線でのイメージを踏襲しつつ、サウンドで新しいことをする、というのが彼女の取るべき路線であり、実際そうしたのがこれだ。

音に関しては、Arianaの素直な声質を活かすべく、極端なEDM路線には振られていないし、音数を今風に抑えながらも痩せていない感じに仕立ててあって、これもまた上手い。感傷に耽りっぱなしでもなく、おバカ満開でもなく、そこは女性としての成長をサウンドスタイルでも出したいところ。どこまで彼女自身の意向がプロデュースに通ったのかは分からないが、周りが用意した物と、彼女自身が演っていて辛くないことが一致しているであろうこれは、聴いていて安心感を与える。

フィーチャーアーティストも、多からず少なからず、メジャーもメジャーなPharrell Williams、Nicki Minaj、Missy Elliottの3人が登場している。そしてその3人のスタイルも手堅い。ポップアルバムとしてまっとう。セールス的成功により潤沢な資金を使えるだけ使ってのプロモーションもあり、Arianaのこのアルバムもまた、世の中に浸透することだろう。顔が逆さまな理由だの、アルバムタイトルの由来だのは、そこいらに記事が転がっているから、そちらを参照してほしい。文句を言うべきところはなく、ただ素直に聴くべくして聴いた。(2018/8/22 記)

Dangerous Woman (2016)


(★★★☆☆ 星3つ)




3作目にしてもう確立されたArianaカラーでまとめられたアルバム。ただそれだけに、セールス的には成功していても、少し飽きられてきているのではという危機感を抱く。ランダムプレイで聴くと、ファースト・セカンド・そしてこのサードと、どれも同じように聴こえる。

ビッグスターとして不動とも言っていい地位にあり、ちらほら醜聞もあり、その評判に対して開き直るかのごとく歌詞の中にはbで始まる卑語も入り、ここまで来ると相当の根性と神経の図太さがなければやっていけないだろうし、最早一つのビジネスシステムとなってしまった立場からすると、堅持すべきところと攻めて変わっていくべきところを自分で決定することなどできないのかもしれない。が、そこを敢えて周りの演出陣は新しいArianaを出していくべきだっただろう。そこに成功しているかといえば、「?」マークが付く。

フィーチャーアーティストで新鮮味を出すことにも成功しているとは言えない。Nicki Minaj、Lil Wayne、Macy Grayなどの名前が見いだされるが、Macy Grayはミスキャストに思えるし、Nicki Minajにも勢いが見られない。一枚通して聴いてみて、受けるだろうけれども、ポップアルバムとしてああ楽しかった、と手放しで喜べない感じがした。(2016/6/16 記)

My Everything (2014)


(★★★★☆ 星4つ)

大成功したファーストアルバムがまだまだ聴かれているうちに間髪置かずに出されたセカンド。Ariana Grandeは攻めている。といっても楽曲に無理のあるところはなく、爽やかな声を活かした分かりやすい楽曲で、しかし飽きさせない構成でもって自分のカラーを確固たるものにしたようだ。

これがマーケティングに基づいた商業音楽であるとしても、元(アーティストの歌の技量とキャラクター)が良くなければ成り立ち得ない訳で、Ariana Grandeの勝利ともいえるだろう。フィーチャードアーティストとのコラボもアルバムの曲の中で半数以上を占めるが、それでも散漫な感じはせず、全てがArianaのトーンでまとめられている。極めてまっとうな作りで、これぞポップスターのポップアルバム。(2014/7/5 記)

Yours Truly (2013)


(★★★★☆ 星4つ)

ポストMariahと言われているようだが、R&Bを意識した歌い方と歌唱力は確かに有力。ホイッスルレジスターも難なくこなしている。ルックスがかわいらしくてポップなのがまず受けている要因だろうが、肝心の歌がちゃんとしている。

このアルバムだが、そうした方面での売り出しなのだろうなという音作り。しかし、伝統的すぎず流行りすぎずのいいところを突いている。UKボーイズポップグループ出身のNathan Sykesとのデュエット”Almost Is Never Enough”などは、こうした若いポップ歌手同士のデュエットであるという前提を知らなければ、本格ブラックアーティストとして言われても納得の出来。

ともかくこうした人がアイドルとして売り出されようとも、人様に歌を聞かせるには聴くに足る歌唱力がまず第一前提であるというラインを押さえているところに安心を覚える。(2014/7/5 記)

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