音楽レビュー All Saints


Testament (2018)


(★★☆☆☆ 星2つ)




90年代には人種混成グループがいくつか成功を収めた。All Saintsも90年代後半に現れたそんなグループのUK代表だ。そして、これまたよくあるように紆余曲折を経て、一昨年2016年にカムバックアルバムが出ている。この”Testament”はその第2弾だが、Testament(遺書、遺言書)という名からして、これを最後にするのかもしれない。

ところで、肝心の内容だが、なぜまだ演るのかという意義が正直よく分からない。年月を経たにもかかわらずまだきちんと歌える潜在能力が、曲の一部では垣間見えるのだが、それを活かしきっていない曲にフラストレーションを感じる。
近年、ポップの分野で成功したアーティストはアルバムを出す場合に、虚飾を排したエッセンシャルな構成にして、アーティストとしての本質を表現する傾向があるが(BeyoncéやChristina Aguileraなど)、このアルバムは一言でいうなら、エッセンシャルなのではなく、貧相。彼女らが輝いていた魅力が見えてこない。かといって、玄人好みの能力本位なものになってもおらず、なぜこんな中途半端な出来なのかと疑問に思う。マーケットやトレンドの変化を捉えつつポップシンガーやグループが輝き続けるのは難しいのかと、その厳しさを感じた。(2018/9/5 記)