音楽レビュー TLC


TLC (2017)


(★★★☆☆ 星3つ)




まさかTLCを旧譜の回顧でなく新譜のレビューとして取り上げることになるとは思わなかった。個人的には、破天荒なファーストの”Oooooohhh…On The TLC Tip”は好きだったものの、クールだのレイドバックだの何だのという名の下にダルなスタイルに成り下がったセカンド”CrazySexyCool”以降には興味がなかった。しかし、3人でのアルバムは2002年Left Eye死後に発表された”3D”含め4枚しかないにせよ、セカンド以降も商業的に成功しビッグネームであったTLCがカムバックするのは当然あり得たことだろう。

そしてクラウドファンディングによって制作されたこの”TLC”だが、らしさはT-Bozがライティングに参加した”Way Back”などの曲に感じることができる。今の不幸な時代を反映させた音とはまた違って、それこそ”We go way back”と歌うように、往年のスタイルを彷彿とさせるサウンドは成功している。
しかし”It’s Sunny”や”Scandalous”なんかは、例えばJanet Jacksonがやった方がいいような気がする。

結局TLCとはBabyfaceやDallas Austin、Jermaine Dupriといったプロデューサー達のボーカルボックスだったのだろうか、彼女らの意味とはと、手堅くまとめてはあるが曖昧でどっちつかずな曲達を聴いているうちに1枚聴き過ごしてしまう。

2010年代に入ってからの往年のビッグネームの掘り起こしを、限りがあっていずれは枯渇して行くだろうことから、個人的には「化石燃料音楽」と密かに呼んでいるのだが、これもまたそんな化石燃料音楽の一つなのだろうか。T-BozとChilliにどれほど自主的な意思があって自分達でこれのリリースをコントロールできたのかは分からないが、Left EyeのいないTLCが蘇るのは無理があった気がしてならない。(2017/9/8 記)