音楽レビュー Keith Sweat


Playing For Keeps (2018)


(★★★★☆ 星4つ)




甘く切ないバラードが云々という宣伝目を見かけて、このアルバムもちょっとダルなんだろうかと危惧しつつ聴き始めたら、結構いい。どうやら無味乾燥で誰がやっても同じような昨今の無調R&Bサウンドに抗して作られたようだが、もう一つの潮流であるR&Bの90’sブームにうまく乗った感じ。

もちろん90年代初頭のニュージャックスウィングバリバリのダンスチューンは一つも入っていない。が、スローでありながらどこかグルーヴ感あるサウンドは、Keith Sweatらしさをよく表現している。90’sのR&Bグルーヴというと筆頭に名が浮かぶのが名プロデューサーTeddy Rileyだが、何と本人をフィーチャーした曲”Who’s Ya Daddy”も入っている。そしてこれまた90’sなK-Ciを迎えての”How Many Ways”もあり、濃厚なR&B黄金時代を現代に蘇らせている。

懐古的といえば懐古的なのだが、現代的バリエーションとして、未だKeithを聴けるのは幸運なことなのだろう。聴く価値がある。(2018/11/20 記)

Dress To Impress (2016)


(★★★★☆ 星4つ)



星4つ、ただし少々甘め。前々作の”Ridin’ Solo”のダルな感じに嫌気がさして、2011年リリースの前作”Til The Morning”はスキップ。従って聴くのは5年ぶり。

5年のうちに声が随分老けた。歯並びが悪くなったのかと思うような感じだ。Ronald Isleyのような年ならば老成もまた一興なのだが、まだそれには早いのでは。

その代わりといっては何だが、曲はバリエーション豊かになり、ダル一辺倒ではなく楽しめる。”Tonight”では先ごろ復活を遂げたSilkをフィーチャーして、古き良き時代を思わせる。今回古き良き時代を意識したのかと思わせるのは、8分の12拍子の三連符の曲が複数見受けられること。王道のブラックミュージックを継承する正統派といった感じだ。

そして長年のファンを楽しませるかのように、ラストはLSG以来のGerald LeVertをフィーチャーした濃密なバラード”Let’s Go To Bed”で締めくくる。しかし熱い歌いっぷりの濃い男2人でLet’s Go To Bedとは、と。”Tell me whacha gonna do, baby”と歌われ、別の意味でも楽しめる。何はともあれ、聴いて損はない。(2016/8/1 記)

Ridin’ Solo (2010)


(★★★☆☆ 星3つ)

80年代に活躍し、生き残っているKeith Sweat。Johnny Gill, Gerald Levertと組んだLSGでは濃厚な男のR&B世界を展開して、セクシーな魅力を振りまいている人だ。なのだが、LSGの成功以降、まったり・甘すぎなスローばかりで、少々退屈。

特にこのアルバムはどれも同じ曲に聴こえてきて、”I Want Her”で鳴らしたあのスリリングなスイング感のあったKeithはどこに行ったのだろうと思う。曲に勢いがなくて、夜のイメージの都会的な雰囲気ではあるが、洗練されてはおらずもったりしていて、聴いていると、ちょっと老け込みそうな感じ。「大人の男はパワーじゃないぜ、テクニックだぜ」と言われている感じだが、相手(聞き手)は「そのテクニックはいいからもっと早く!」とじれる。そしてそのうちに終わってしまい、「若い男みたいな勢いやハードさがない…」という欲求不満を感じさせる。