Water For Your Soul (2015)
(★★★☆☆ 星3つ)
とある方のご厚意により発売前にプロモーション盤を聴いた。絶賛を浴びたファーストアルバムを持つアーティストが誰しもそうであるように、Joss Stoneはもがいているように思える。彼女の時に絞り出すかのような歌声からもそれは想起されるのだが、音楽のスタイルをソウルにセッティングしたファーストから逃れてどこへ行こうか、世界中を探して回っているように聴こえるのだ。
今回のアルバムは「こんなにレゲエ寄りで大丈夫だろうか」と思うほどサウンドスタイルは分かりやすいレゲエの曲が多い。それはJSが参加したプロジェクトグループSuperheavyのDamian Marley(Bob Marleyの息子)の影響によるものかと思った。しかし、種明かしをすると、レゲエアーティストDennis Bovellとの共作だからだ。無論Superheavyの影響は並々ならぬものがあって、そこからインスパイアされてこの共作に至った可能性は低からずあるだろう。しかし、レゲエというのはどうしようもなくエスニシティーに拠った音楽で、これをレゲエのルーツがない者が演るととたんに模倣の臭いに化けてしまう危険な音楽だ。
JSは上手い。歌の技量は文句なし、声も一時期荒れていたがコンディションが戻ったように聴こえる。しかし、この音楽はどうなんだろうか。レゲエが地域を飛び出してワールドワイドに浸透する作用のための音楽、と、逆に考えて聴いてみたとしても、悪く言うとどうにもモノマネ歌合戦で「うわー、そっくりぃ」と楽しむのに似て、心酔できないのだ。
難しい。これがリリースされてどんな評価を受けるだろうか。(2015/6/30 記)
LP1 (2011)
(★★★☆☆ 星3つ)
前作の喘ぐように苦しげな作風のアルバムから2年経ってリリースされた本作。幾分自由になったかのようだが、自由になったというよりは野に下って若干あらくれているような印象を受ける。それは、声質が変わったことにもよるだろう。ハスキーなといえば聞こえはいいが、荒れてザラザラした声質になった。今年(2011年)まだ24にしてこれだと、ちょっと歌手として危ういのではないかと思う。
そして、ブルース調の曲が重々しいが、デビュー当時には魂のこもった歌いぶりだったのとは変わって、どこか本物を必死にシミュレートしているだけのように虚しくも聴こえる。ちなみにプロデュースはあの元EurythmicsのDave Stewartとか。
そして、顔の全部を見せないこのアルバムジャケットも意味深。鼻ピアスのモノクロ写真がChristina Aguileraの2003年のシングル”Beautiful”のトリミングかと思うほど、それにそっくり。Joss Stoneはこれからどこへ行くのだろう?
Colour Me Free! (2009)
(★★★☆☆ 星3つ)
このアルバムがリリースされるまでにはレコードレーベルとの摩擦があったらしい。まさかその摩擦から自由になりたいのか、好きにしてくれという意味がアルバムタイトルに現れているのかと色々邪推したくなるが、そんな事前情報抜きにアルバムを聴いてみると、今までの成功ですっかり定着した、いわゆるblue eyed soulというか、白人のブルース歌手というか、そういったイメージから、少し別のフィールドに踏み出した感がある。
歌い方が少しロックっぽくなった感じがあり、土臭いブルースも、ロックアルバムに収録されているブルースのような感じに響く。土臭い感じはデビューアルバムからずっとあったカラーではあるのだが、それがロック寄りに響くこのアルバムを聴いていて、「Joss Stoneはこれでいいのだろうか?」と思ってしまったのだが、そう思う聴衆にJoss Stoneは”Colour Me Free!”と言いたいのだろう。ターニングポイントになるアルバムかもしれない。
Introducing Joss Stone (2007)
(★★★★★ 星5つ)
衝撃のデビューからセカンドアルバム”Mind, Body & Soul”を経ての正常進化。年齢的に見ればまだまだ”Introducing”なのだろうが、歌い方や声質も若干変わり、自らの音楽を追究するスタイル に溢れている。魂がしっかり宿っているのが、決して日本のナンチャッテR&B風味の猿まねとは違うところ。
The Soul Sessions (2003)
(殿堂入り作品)
Joss Stoneの名を知ったのは、NY Timesのレビューでだった。衝撃的だったのは、声の円熟味を堪能できるソウルアルバムでありながら、それを歌うのは16歳の白人の少女であるということだったが、そのギャップを楽しむのがこのアルバムの主旨ではなく、まさに魂から出た歌声が自在にソウルミュージックを歌い上げる、その上質さだろう。
収録曲数は最近のアルバムには珍しく10曲と少ないが、恣意的なinterludeもなければ蛇足のrepriseもなく、磨き上げられた10曲は聴くにつけて素晴らしさを感じる。殊にラストの”For The Love of You”は、Whitney Houstonなど様々なアーティストによってカバーされてきたソウルの名曲だが、Joss Stoneのそれはまさに新境地を見る思いで聞き入ってしまう。このアルバムはソウルミュージック好きには必携のアルバム。