音楽レビュー Superheavy


Superheavy (2011)


(★★★★★ 星5つ)

プロジェクトとはいえ、これほどスーパーな、そしてグローバルなグループはなかった。構成メンバーはMick Jagger、元EurythmicsのDave Stewart、Joss Stone、A.R.Rahman(映画『スラムドッグ・ミリオネア』や『ムトゥ 踊るマハラジャ』の音楽を手がけた作曲家)、Damian Marley(Bob Marleyの息子)。ロックにR&Bにインドにレゲエと、なんだかごった煮状態でどうなのかと思うが、聴いてみるとこれが不思議にまとまっている。
考えてみれば普段ソウルミュージックざんまいの人でもクラブに行けばハウスに身を任せるし、いわば全身同一ブランドでコーディネートしている服装の人が芸がないと思われるのと同じで、ミックスすることがスタイルを作るというのは、むしろ自然なことで、それは音楽についてもいえるのかもしれない。

メンバー一人一人のこのアルバムでの印象は以下の通り。
◎Joss Stoneは、自身ののアルバム”LP1″のプロデューサーがDave Stewartだったのは、これの伏線だったのかと思わせるが、自分自身の作品で聴かせているよりも、はるかにのびのびとしている。声が苦しげなのは気にはかかるが、このメンバーの中で紅一点、がんばっている。
◎Dave Stewartのギターはいかにもブリティッシュロック然としていて、この人はEurythmicsで身を立てた人なのに、ロックが本質なのだなあと思わせる。(とはいえ”I Don’t Mind”という曲で”Sweet Dreams”のサビをさりげなく持ち込んだりしていて、自分の過去を否定してはいないので安心)
◎Damian Marleyはレゲエ以外のなにものでもなく、一声であたりをジャマイカ色に染める。
◎そしてそれに張り合うがごとく、A.R.Rahmanが音階を持ち込むとあたりにはとたんにインドの風が吹く。不思議なコラボレーションだ。
◎そして発起人のMick Jaggerだが、聴いて思うのは、この人はマジメな人だなあ、ということ。果敢にレゲエに乗ってみたり、かと思うとJoss Stoneとデュエット状態になってみたり、そしてこのグループをまとめて、ビジネスとして成功させつつ、音楽とはどうあるべきか(いかに自由であるべきか、演奏する者・聴く者両方に自由を与えるにはどうしたらいいのか)を追求するその姿勢は、胃が痛くならないのだろうかと心配するほどマジメだ。

世の中が閉塞状態にあって久しい中、そして不穏な軋轢が国や地域の間で渦巻く中、聴いて音楽を楽しみ、自由とは平和とは何かを考えるソースとなる1枚。