音楽レビュー Bobby Brown


The Masterpiece (2012)


(★★★☆☆ 星3つ)

Bobby Brown久々のスタジオオジリナルアルバム。今年のWhitney Houstonの死は元夫BBにとっての元妻を失った意味だけではかった。世界的な歌手の死という意味であまりにその損失の意味は大きく、Whitneyを死に追いやる元凶としての薬物漬けに招いた人物として、BBは犯人扱いだ。それゆえ、当然ながら辛い内容になるだろうと予想して聴いた。

1曲目からして題名は”Don’t Let Me Die”。まあ、BBにしてみれば「俺だって死ぬほど辛いんだ」と言いたいところなのだろう。その後の曲も気がふさぐような題名が続く。それでも救いと希望を求めるのか、ラストは”Man I Want To Be”なる題名のアメリカンロックを思わせる骨太の曲調の曲で締めくくる。こんなに私的にインスピレーションを受けて、そのすべてが煩悶に彩られたアルバムは、他アーティストを見てもそうそうない。

音楽的に見ると、Ralph TresvantやJohnny GillとThe Heads of Stateというグループを組んでの活動も、ライブツアーはあったのもの結局アルバムとして結実することはなく、このアルバムでのRTとJGのフィーチャリングアーティストとしての参加がその残滓のようだが、それらの曲はそれぞれのアーティスト色が生かされていているという意味ではいい。
BBの声は前にもましてダミ声だが、歌えてはいる。そして、比較的かっちりした構成の曲を聴いていると、ソングライターとしての力量も感じる。しかし、内容が内容だけに、音楽だけ見ると良いからといって繰り返し聴くには、あまりに辛い。

BBは重い十字架を背負って生きていくしかないだろう。それを思うと物憂い気持ちになるが、Whitneyのような最期にはならないでほしいと思う。(2012/7/15 記)