映画レビュー This Is It



(★★★★☆ 星4つ)



友人に誘われて映画館で鑑賞した。Michael Jacksonがラストコンサートをやることについては、「整形や奇行ですっかり狂ってしまって精彩を欠いた破産寸前の人間が、周りに担ぎ出されて過去の栄光にすがってコンサート? 興味なし。小児性愛の疑惑はどうなった?」などと思っていた。

ドキュメンタリーというのは、公正を保っているように見えて、主題にフォーカスした時点で、そこに好ましい印象を持つように作られている。よほど批判しようという視点でそれを作ったのでなければ。それが映画ということになれば、なおさら。なので、観る前からある程度、「これを観たらMichael Jacksonのことを見直すんだろうなあ」という予感はあった。

そして、観ると、やはりそれまでネガティブな印象に振れていたMichael Jacksonの印象が、少しいい方に傾いた。少なくとも、エンターテイナーとして髄一の存在だったということについて、認識を新たにした。
ダンスや演出もそうなのだが、曲の力強さが、すごい。強力なメロディーラインや、ひとつのモチーフをこんなにふくらませられるのかという展開が、あらためて聴くと、とてもよく入ってくる。シンガーであることのキャラクターが明確であることと、ソングライターとしての資質とが、こんなにすごいとは生前には思えなかった。

Michael Jacksonはひとつのレガシーになった。その軌跡をネガティブな印象のまま見すごしてしまわなくてよかったと思わせた映画。