映画レビュー スプリング・フィーバー (Spring Fever)



(★★☆☆☆ 星2つ)



英語字幕の中国語版で鑑賞。ゲイカップルの片割れが既婚者で、嫁にそれがバレたばっかりに…、という、舞台設定は少々下世話。そしてその下世話なドロドロ関係をシリアス(陰鬱)に描いていく。いつも夜か雨が降っているかの画面で、グレイで、人々はほとんど笑わない。浮気相手が男だと気づいた嫁も、喚くわ喧嘩で物はテーブルから落とすわ、浮気相手の仕事場に乗り込んでいくわで、見事にお約束通り。

しかし、そういった設定の下世話さにもげんなりするのだが、むしろ事務所で働いていた男が唐突に元いたゲイバーの女装歌手に「身をやつして」みたり、そもそも今時ゲイカップルを「禁断の愛」(噴飯)に仕立てる見方であったりといったところが、「何だかなあ…」という気分にさせる。
既婚ならば不倫という意味で禁断ではあるのかもしれないが、そんなことは今や巷に溢れていて、旦那の浮気相手が男だったなんてことも今や特殊ではなく、そんなプロットを組んだところで「舞台設定一丁上がり」というわけにはいかないと思う。安直。ゲイが禁忌であるとかそれだけで素材や舞台になるとかいうことは、石器時代の出来事だ。
安直といえば、それぞれの人間の感情の映し出し方も月並みで、ベッドシーンも「ゲイはそんなセックスはしない」とゲイが見たら怒るような安直さ。その辺は近年の映画でいうと、永久居留 (Permanent Residence)の方が遥かにしっかりしている。

要するに設定がイマイチ、画面がずっと暗くてその雰囲気で観客を飲んでしまおうとするのがイマイチ、描写がイマイチ、そしておまけに終わり方も中途半端でイマイチな映画。半世紀前に作られていたらまだ救いがあったかもしれない。これが2009年カンヌ国際映画祭 脚本賞受賞の意味がさっぱり分からない。他の候補がよほど駄作だったのか。