映画レビュー コンテイジョン



(★★★★☆ 星4つ)

疫病パニック物。本作は2011年公開だが、驚くほど今の新型コロナウィルス感染症をめぐる状況に似ている。まず、設定が中国を起源とするウィルスの伝播から始まるというのが「お」と思う。WHOの事務局長役はローレンス・フィッシュバーン。対策が後手後手、身内贔屓の黒人WHO事務局長だ。その他、ジャーナリスト気取りの金にまみれたブロガー、買いだめと暴動、外出禁止令、急ごしらえで設備も備品も不十分な野営に近い医療施設、それらを見るにつけ「この映画は新型コロナウィルス感染症騒ぎを素材に再解釈した作品で、今これを伝える必要性から緊急に創られた」と言われたら信じてしまいそうに思われる。「今こんな出来の物を創る暇も経済的体力もない」という考えがそれを否定するだろうが。
そしてまだ現実の新型コロナウィルス感染症では到達していない段階としての、製薬会社の思惑、開発されたワクチンについて誰が先にそれを手にするのかの、実力行使を伴った駆け引きさえ描かれている。

現実が厳しい中、創作物でも伝染病パニックを観ていられる点は何なのか挙げろと言われれば、大きく3つ。
その1、テンポがいい。クローズアップで描かれる人物も比較的多く、場所も様々ながら、同時進行のストーリーがきちんと整理されて見せられており、イライラがない。現実の、制作が政府から発表されるたびに非難轟々で、よくぞんなバカなことを臆面もなく言えるなというイライラを忘れられる。
その2、俳優陣が豪華。先述のローレンス・フィッシュバーグ他、マット・デイモン、ケイト・ウィンスレット、グウィネス・パルトロウ、ジュード・ロウ等々、主役級の有名俳優がゴロゴロ出てくる。
そしてその3、結末に希望が持てる。個人的には、ホラー映画では救いのない終わり方で後ろ暗い気持ちになる位なのが好みなのだが、パニック映画では、物語の始末をつけるという意味で、納得の終わり方をしているのが好み。その点、この映画ではそこもきちんとしている。興行収入が1.355億ドルというのも納得。

家ですごすことが求められる今、こういう映画を観ておくのもいいと思う。(2020/4/15 記)