飲食店レビュー Flora di Mare(フランス料理 文京区本駒込6丁目)


(★★★★☆ 星4つ)

Flora di Mare(フローラ・ディ・マーレ)は、文京区の静かな場所にある「隠れ家的レストラン」。地下鉄の千石駅からほど近い。フランス料理なのにイタリア語の店名?と思ったら、1階はフランス料理、姉妹店のイタリアンレストランが地下、という建物構成の店だった。世の洋食的ジャンル分けで言うと、フレンチもイタリアンも一緒くたになった店は大抵「ん? んー…」という感じのメニューと味なのだが、結論から言うと、ここはきちんとしたフランス料理店。そして料理の完成度も、食べた満足感も高い。1階のこの店と地下のイタリアンレストランは中の階段で繋がっているが、キッチンも別、無論メニューも別の店。

年末、クリスマスディナーも落ち着いた頃、パートナーとのお疲れ様会として訪れた。コースはパートナーが予め席とともに予約。まず感心したのは、新型コロナ感染症対策がきちんとしているところ。入店時の手指の消毒はもちろん、どこも飲食店は厳しい節、十分に距離をとったテーブル配置(おそらく減らしたのだろう)、そして冬の寒い中でも窓も外気が入る程度に開けられていて、その代わりブランケットを用意し、各テーブルにはオイルヒーターもある。こうした対策は、できているようでナアナアになっている店も少なくないなか、店の誠意を感じ、安心感がある。

レセプショニスト兼フロア担当は、温かいもてなしと快活な語り。コース進行を取り仕切るが、決して押し付けがましくない。そして料理のことを自分の頭で消化している安定感があり、店を居心地の良いものにしてくれる。例によって例のごとしの我々はコースを通じてシャンパーニュを頼んだが、オンリストのドスーザがたまたま切れていた。Robert Moncuit Blanc de Blancs Les Grands Blancs Extra Brutを代わりに提案されたが、コースとよくマッチしていて、代替案として適切だった。他のテーブルではワインペアリングを楽しんでいたようだが、そちらも魅力的だった。

料理は意欲的なモダンスタイル。日本ならではの季節感を感じる素材も採り入れられていて、楽しい。そして、しつこいようだが、地下のイタリアンレストランとは別個のもので、フレンチ然としていて、日本的解釈の果ての洋食店ではない。それほど気張らず、しかしちゃんとしたフレンチを食べたいなという人に好適。近所に住んでいたら、きっと行きつけになるだろう。(2021/1/2 記)