スロー・ラーナー[新装版]
(★★☆☆☆ 星2つ)
これは困った。背表紙の解説によれば「現代アメリカ文学史上に聳える三つの傑作長篇を」著したといわれる巨匠の作品集でありながら、ちっとも面白くない。多分、自分の文学に対する圧倒的な知見不足に依るところだと、我慢して読み進めたが、やっぱりちっとも面白くないのだ。
筋書きが独り善がりで、読んでも展開の先がない。多分、読んだ人を誰も幸福にしない。それが一つだけならまだしも、収録されている6つの作品どれもがそうだ。巻末に収録されている作品解説も、どれもが苦労しながら言葉を取り繕って作品の意義を必死に捉え訴えようと努力しているのだが、残念ながらその中には『駄作』と斬って捨てられない立場の言い換えにしかすぎないものもあって、いかにも苦しい(実際それに首肯する趣旨の記述さえある)。王様は裸だと言ってはいけないのだろう。
個人的に、アメリカ文学には好きな作品もある。ビート文学などは中身がヤク中のうわごとに過ぎないようなものでも楽しめたり、あるいはその後の時代のものでも、詩情あふれる叙述と、編まれた物語そのものが味わい深くて、読んでよかったと思えるものもあるなか、この本はページを繰るのが苦痛だった。これを読んで自分に得たものがあるとすれば、トマス・ピンチョンの作品は、自分の趣味からするともう読まなくていいなと分かったことくらいか。いろんな意味で勉強にはなった。(2018/10/10 記)