音楽レビュー Cher


Dancing Queen (2018)


(★★★★☆ 星4つ)




御歳72にしてのアルバムリリース。そしてABBAのカバー。オリジナルソングが聴きたかった…と思うところもあるが、最早アルバムが出る事自体が奇跡であり祝福。

歌いぶりに文句はない。Cherの声自体が音楽界にとっての財産。曲のアレンジはアグレッシブなところや2010年代後半を感じさせるところは全くなく、これがもし7、80年代に出たアルバムのリマスター盤だと言われたら信じてしまいそうなアレンジとオーケストレーションではあるが、ABBAをいじってよい結果になったことはないので、これは正解というべきだろう。よりクラブシーンに馴染む曲がほしければ、シングルカットされた”Gimme! Gimme! Gimme!”のリミックスを聴けばよい。

奇しくもリリースのタイミングが映画”Mamma Mia! Here We Go Again”と重なり、あちらはCherとは関係がないが、ABBAのリバイバルとして相乗効果があるだろう。このアルバムは、ABBAもCherもレガシーとして引き継がれてゆくこととしての一里塚だ。(2018/10/10 記)

Closer To The Truth (2013)


(★★★★★ 星5つ)

一度は引退したのに映画『バーレスク』で主演のChristina Aguileraを食わんばかりの存在感を見せつけ、その中での歌唱もまた然りだったので、アルバムも遠からず出るだろうと思っていたら、出た。
いや、まさに「出た~!」とお化けでも出たかのような存在なのだが、それは67近くにしてこの(Photoshopでいじられまくったであろう)ジャケットビジュアルに関しても。

さて、肝心の歌声だが、堂々たるもの。趣味が悪いの何のと散々いじられ続けているCherだが、何のかんの言ってやはり一流のエンターテイナーとしての骨子は押さえているのである。
そしてサウンドがまた攻めている。全曲シングルカットできそうな勢いとクオリティーで、ほとんどがダンスチューン。あのPink!が楽曲を提供していたりするのも話題。そしていかにも「アゲ」を好むゲイクラブで好まれそうな音作り。しかしこれをゲイだけに注目させておくのはもったいない。デラックス版には『バーレスク』からの”You Haven’t Seen The Last of Me”も入っているが、あの時の復活を過去のものにするような現在を突き進む姿勢は、本当にすごい。まあ2005年にツアーが終わっての引退宣言はなんだったのかとも思うが、ともかくも一聴すべきアルバム。(2013/10/30 記)