ブックレビュー ピエール・ルメートル

その女アレックス


(★★★★☆ 星4つ)

端的に言って面白い。どんでん返しがよくできている。惨殺の描写が激しいので万人に薦められるものではないが、個人的には面白いサスペンスがないかと聞かれたら推す一冊だ。

訳者あとがきにはこうある。

この作品を読み終えた人々は、プロットついて語る際に他の作品以上に慎重になる。それは(略)これまでとは違う読者体験をしたと感じ、その体験の機会を他の読者から奪ってはならないと思うからのようだ。

これは正しくそうで、感じたことを具体性をもって伝えようとすると興を殺ぐことになりかねない。それほどこの作品は筋がよく練られていて、その筋のどこを取り出してみても、その取り上げ方が大切な中身を漏らしてしまうほつれとなってしまいかねないほどに絡み合っている。

最初は俗で、これを読み進めるかどうかどうしたものかと感じたところもあった。それはこの酷いカバーデザインも手伝ってのことだったが、それでも4分の1ほど読むと、あとは一気に作品世界に没入できるようになっている。

フランス出身のサスペンス小説がこれほど人気を博しているという点も興味深い。言葉の遊び、未だ階級を引きずっているフランス社会の有様、そしてファッション(しかもメンズファッション)と、世界はいかにもフランス。そこも読んでいて面白味を誘うところだ。

最初に述べたように、惨殺の描写もあからさまだし、途中これでどう溜飲を下げるのか、あるいはその筋運びで行くと途中の描写と矛盾が生じるのでは?という箇所も出てくるが、それらは最後にピタっとピースがはまるようになっている。そういう気持ちよさは、その結末が果たして「正しい」かどうかは別として、読後に「よかった!」と思わせる。仕事のある日の夜に読むと、翌日睡眠不足に。年末年始、家にいる時間が多くなる時には絶好の一冊。(2015/12/16 記)

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