ブックレビュー チェーホフ

チェーホフ・ユモレスカ―傑作短編集〈1〉


(★★★☆☆ 星3つ)

チェーホフとはどんなものかとまずはとっつきやすい小品集から手をつけるべくこれを選んだ。とっつきというものがその作家に興味を持たせることを目的としているなら、結果としてこの試みは失敗に終わった。

チェーホフは医学生時代に物を書き始めたらしい。口を糊するためにちょっとした滑稽な読み物を書いていて、それがユーモレスカなのだが、19世紀末に書かれたそれらを読んでも、ソビエトに移行する前のロシアの世相を知る手がかりとしては幾分有益だったが、(シャンパン好きの俺としては、その時代にシャンパンがロシアで消費されていた記述などはルイ・ロデレールやヴーヴ・クリコ・ポンサルダンなどを想起させて興味深かった)ユーモアなんだろうなと頭で理解はできても、くすりともできない。つまり、ユーモアは完全に今では色褪せてしまっているようにしか思えなかったのだ。

ではそこにチェーホフの文才のよすがを知ることができるかというと、それも発見するのは難しかった。文学的言い回しや秀でた比喩にハッとさせられるわけでもなく、俺にとっては退屈すぎた。おそらく、ユーモアにせよ、文学的味わいにせよ、その幽かさを読み取るのがこの人を理解する肝なのだろうが、俺にとって読書とはお勉強ではなく、新しい発見と興奮を喜びとして味わうためのものであるので、単純に個人的な空振り。チェーホフをくさすつもりはなく、俺には合わなかった、ということだ。(2012/8/21 記)

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