ブックレビュー『無心(フレッシュマインド)のすすめ』


永井宗直(著)


(★★★★☆ 星4つ)

自分自身仏教に傾倒している訳ではないが、我々日本人にとって親しみやすい仏教の教えの基礎として、禅宗のひらたい考え方を学ぶのにいいのではと買ってみた。

まず、著者の臨済宗万願寺住職は大学時代に仏教に出会っていることから、宗教的教えと、論理(理屈)と、禅宗の考え(教え)とが、それぞれどう違っているのかを折に触れてやさしく書いてあるのがいい。仏僧でなく日常生活を送っている一般の人々向けにかみくだいたわかりやすさで、教えを書いているのも分かりやすいポイント。ただ、お父さん=仕事、女性=家庭とか、いわゆる毒親の存在を一顧だにせず親子の情を書いているところなど、いささか因習的すぎる一般家庭の像に偏ってはいるが、それらは「物のたとえ」と思えば飲み込めなくもない。

タイトルの「無心」には「フレッシュマインド」とルビがふってある。これは書中になぜそうあるのかがある。それを踏まえたうえで最後に『座禅のすすめ』としてイラスト付きで紹介されている座禅を実践すると、普段込み入った考えや凝り固まった自我が解放されてよいのではないだろうか。入門書としては肩肘張るところもなく、欲張って書かれて飲み込みにくいところもなく、良書であると思う。(2014/4/10 記)