シャンパーニュレビュー Hommage À WIlliam Deutz 2012 Merutet & La Côte Glacière


初めてCuvée Williams Deutzに接した時には、芳醇の中にあるきめ細やかさや、奥深くも繊細な味わいが心地よいと感じたものだ。Amour de Deutzの透明感や軽さは天恵のものとでも言うべき洗練さで、これとはまた別の次元にあるが、Cuvée Williams Deutzもまた別の頂点。そして、Hommage À WIlliam Deutzは、創業者に捧げられた名を冠するだけあって、Amour de DeutzよりもDeutzらしいのはCuvée Williams Deutzの方なのかもしれない。

さて、Hommage À WIlliam Deutzだが、2010では混醸されていたものを、2012では更に区画ごとに分けたことは、その地のぶどうの性質を忠実に表そうとしたことの現れだが(今色んなメゾンで流行りのクロ=シングル畑の醸造を意識したのもあるかもしれない)、自然がもたらしたぶどうをシャンパーニュにするのは、人の力。Hommage À WIlliam Deutz 2012には、Merutet、La Côte Glacièreのどちらにも人智を尽くした仕上がりの良さを感じた。

Hommage À WIlliam Deutz 2012。Meurtet(左)とLa Côte Glacière(右)。
Hommage À WIlliam Deutz 2012。Meurtet(左)とLa Côte Glacière(右)。

ドイツ人創業家らしい、素っ気ないとさえいえるデザインのラベル中央に、La Côte Glacièreは青色、Meurtetは緑色で記されている。

ミュズレと、ホイルキャップを剥くと現れる裏側の色も、区画の表記色に揃えられている。
ミュズレと、ホイルキャップを剥くと現れる裏側の色も、区画の表記色に揃えられている。

さて、2020の大晦日に飲んだのはMerutetの方。

Hommage À WIlliam Deutz 2012 Merutet
Hommage À WIlliam Deutz 2012 Merutet

ピノ・ノワールらしい、わずかにオレンジ味を帯びた黄色。そして香りはブーケのような華やかさがある。フィネスとはこのことと思わせる、どこも尖ることのない破綻のなさ。それでいて、広がりと複雑味があり、フードペアリングにはさほど神経質でないおおらかさがある。単一区画でこれだけきっちりとメゾンらしい味わいに仕上げられるのはすごい。

開けて2021年の元旦に開けたのは、La Côte Glacière。

Hommage À WIlliam Deutz 2012 La Côte Glacière
Hommage À WIlliam Deutz 2012 La Côte Glacière

こちらも色はピノ・ノワールらしい色。味はこちらの方が、ややワイドな味わいといったらいいのか、より男性的とでもいえばいいのか、Meurtetよりも輪郭を感じる存在感がある。「普通の」Cuvée Williams Deutzは、記憶ではバランス的にこの2者の中間だがややMeurtet寄りかと思わせるもので、区画ごとの醸造とは面白いものだなと感じた。ミネラル感や香りの複雑さがありつつも、調和の取れた感じは、La Côte GlacièreもMeurtet同様。どちらかを選べと言われたら、俺はMeurtetを選択する。パートナーじょにおもMeurtetがより好みだったとか。それにしても贅沢な飲み比べだった。