シャンパーニュレビュー Drappier Grande Sendrée 2010


色々飲んではいたのに書いていなかったシャンパーニュレビューを久しぶりに復活させてみる。これを書いているのは2024年が明けたところなのだが、この年末年始はちょっと豪華なラインナップを用意することができたので、この機会に。

さて、2023/12/30に飲んだのはこの1本、Drappier Grande Sendrée 2010(ドラピエ グラン・サンドレ2010)。名門Drappierのトップキュヴェ。ビオの先駆者であり、SO2の添加をなくす、あるいはなるべく少なくするといった取り組みでも知られ、何よりピノノワールを根付かせたピノノワールの父と呼ばれた名門が放つものだけに、素晴らしさは飲む前から予見される。

Drappier Grande Sendrée 2010
Drappier Grande Sendrée 2010

セパージュはピノノワール55%、シャルドネ45%。7年以上熟成と言われるが、2012年のキュヴェで9年と言われる。リュミアージュはすべて手作業とか。ドサージュは5g/lと、エクストラブリュット。門出のリキュールは木で15年熟成されたものが用いられているとか。なで肩で底に行くに従って幅広のユニークな瓶の形は、過去の火災で灰に埋もれた中から発見された昔のボトルに基づくもので、1808年創業の老舗らしい歴史を感じさせる。

Carte d’Or(スタンダードキュヴェ)ではピノノワールの力強さが目立つが(それも嫌いではない)、Grande Sendréeではそれはキュヴェが長期熟成に耐えるポテンシャルとなり、洗練された華やかさの基になっている。フィネスは言わずもがなだが、泡ははつらつとしていて、はちみつ、パンデピス、アニス等、複雑さを伴う重層的な香り。余韻が長い。

飲み進めるに従って香りは深みを増すが、端正さはそのまま。どの一口にも上質さを感じる。フードペアリングの可能性は幅広く、寛容で、パテドカンパーニュなどの軽い肉にも合わせることができる。

帆立のカクテル、ブリー・ド・モートリュフ、ゴーダトリュフなどとももちろん合う。
帆立のカクテル、ブリー・ド・モートリュフ、ゴーダトリュフなどとももちろん合う。

何せ気分良く飲めて、気づけばなくなってしまう感じだが、奥ゆかしく、飲む人に寄り添う感じは稀有。ドラピエは由緒正しい名門で、今もこうした素晴らしいキュヴェを送り出しているのに、プレステージ性で言うと他のメジャーなメゾンに比べてアンダーステイトメントな感じがするのは勿体ない。
その一方で、たとえばPierre Petersのように名が知れてもてはやされ、価格が高騰してしまうと惜しいので、知る人ぞ知るであってほしいという気持ちもする。Grande Sendréeはマイナーな存在で、そもそも流通量が少なく、扱いが極端に少ないから、価格以前にあまり目にすることはないと思うが、プレステージキュヴェでは一度は飲んでおく価値のある、そして何か上質な1本を探しているなら有力候補になる1本。